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切り絵パフォーマー 田中征児さん(78) 仕事と切り絵、動ける限り

「福山ばら祭」の会場で、真剣な表情ではさみを操る田中征児さん=5月14日、福山市元町

研究中の立体切り絵

 はさみで紙を自在に切り抜く「切り絵パフォーマー」として知られる福山市神辺町の田中征児さん(78)は2月、右膝を手術して人工関節を入れた。関節の軟骨がすり減って強い痛みが生じる変形性膝関節症が重症化し、日常生活に支障を来していた。術後は痛みもなくなり、イベントなどでのパフォーマンスや仕事も「まだまだやれる」と意気軒昂(いきけんこう)だ。

 切り絵は6歳のころから始め、昆虫や動物などはお手の物。今では「切絵たかし」の芸名で、各地のイベントなどに出演している。得意は“似顔絵”で、その人の特徴を瞬時につかみ、数分で切り抜いて披露する。イベント会場では大いに受ける。最近は折り紙のような立体的な切り絵も研究している。

 本業は工作機械の修理やメンテナンスだ。「顧客は備後地域をはじめ全国に200社以上」あり、各地を忙しく飛び回っていた。ところが患っていた膝の痛みが昨秋から増した。それまで水がたまっては抜いてを繰り返していたが、10月ごろから足を踏み出すのもつらくなった。

 地元の総合病院を受診すると、川崎医科大学付属病院(倉敷市松島)を紹介された。「膝関節の変形がひどかったようだ」と田中さん。付属病院の難波良文・整形外科部長の診察を受け、人工膝関節を入れることにした。キネマティック・アライメント(KA)と呼ばれる、患者にとって自然な、違和感のない形で人工関節を設置する新たな手法という。効果は大きく術後すぐに痛みは薄れ、数日後には早くも歩けるようになった。

 5月14、15日に福山市中心部で開かれた「福山ばら祭」では「ふくやま大道芸」に出演。見事なはさみさばきで観客の笑顔を誘った。田中さんは「人工関節を入れると言われたときは不安もあったが、今では楽に動ける。仕事は85歳まで、切り絵はやれるところまで続けたい」と言う。

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 人は病を免れない。若くても重い病気になるし、老いれば複数の病気を患う人も少なくない。心身の苦痛はあるが、医療の助けを得ながらも前向きに、生き生き暮らしている人の存在は周囲を元気づける。そんな人たちを紹介する。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年06月06日 更新)

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