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(5)心不全のリハビリテーション 倉敷中央病院リハビリテーション部 浜野泰三郎(理学療法士)

浜野泰三郎氏

 はじめに、心不全の特徴として、退院した患者さんの26%は1年以内に心不全で再入院してしまう、という高い再入院率が挙げられます。これは心不全が難治性であり、管理が難しいことを表しています。これに対し、心臓リハビリテーション(以下、心臓リハビリ)は、体力改善と再入院率の低下に有効であることが研究で証明されています。

 心臓リハビリとは、運動のみを指す言葉ではありません。心臓病の患者さんが、体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防止することを目標に行う総合プログラムです。

 内容として、運動、生活・食事・服薬・禁煙などの学習指導活動、心配ごとの相談(カウンセリング)があります。当院でも、リハビリ専門職の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士だけではなく、医師や検査技師、看護師、薬剤師、栄養士、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーなど多くの専門職が心不全診療に関わっています。

 心不全で入院した患者さんは、心臓の働きが低下し、安静生活により運動能力やからだの調節機能も低下しています。また、最近の傾向として、高齢化に加え、心不全以外にも糖尿病や腎不全などの併存疾患を有していること、低栄養状態や筋肉量の減少によりフレイル(心身の虚弱。認知症やうつといった精神心理的な要素、独居などの社会的な要素を含む)といわれる状態になっている方が多いことが挙げられます。そのため、退院したあとも低活動になりやすく、そのまま筋力や体力が低下すると、軽労作でも心臓に負担がかかりやすくなります。

 これらに対して適切な運動療法を行うことが推奨されています。ストレッチや筋力トレーニング、ウオーキング/自転車エルゴメータなどの有酸素運動を継続することで、心不全の患者さんの体力が改善し、その他さまざまな効果が報告されています=

 一方で、良い効果ばかりではありません。不適切な運動は心臓に負担をかけ、心不全を引き起こす原因になることがあります。そのため、退院後は医療機関での外来心臓リハビリ=写真=へ通うことをお勧めしています。

 外来心臓リハビリでは運動に加え、心不全の状態確認、日常生活や活動量の相談・助言が行えます。また、運動時の症状や所見から心不全兆候があれば早期に対応することが可能です。

 心臓リハビリを広めるために、当院と地域の取り組みとして、心臓リハビリ地域ネットワークがあります。現在は当院と4病院(倉敷紀念病院、しげい病院、玉島中央病院、水島協同病院)で連携しており、患者さんの希望された病院に紹介をしています=。また、外来通院が難しい場合は、退院後に訪問看護/リハビリを受けながら心不全管理や運動をする「在宅心臓リハビリ」を受けられる方もおられます。

 おわりに、心臓リハビリの効果を得るには、心不全を理解すること、食事や薬の管理、生活習慣の見直しが必要です。患者さんご自身の行動が大切ですが、ご家族や周りにおられる方の理解や協力も重要です。多くの方が心不全や心臓リハビリのことを知っていただければ幸いです。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 はまの・たいざぶろう 吉備国際大学保健科学部卒。2006年に倉敷中央病院に入職。理学療法士。心臓リハビリテーション指導士、呼吸療法認定士、ロコモコーディネーター。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年06月06日 更新)

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