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(7)通所施設が孤独を防ぐ場所であり続けるために 万成病院精神科デイケア係長 田辺美香(公認心理師)

新型コロナウイルスについての勉強会

通所リハビリ施設で談笑する利用者とスタッフ

田辺美香氏

 こころやからだの病を抱え地域で生活を送っている方々が通う場所に、

 (1)「精神科デイケア」(精神疾患の再発予防や生活のリズムの改善、コミュニケーション技術の向上等を目的とする医療施設)

 (2)「通所リハビリ」(介護が必要な方や、高齢による身体機能が低下された方のリハビリ施設)―があります。

 これら通所施設では、日常の不自由さや生きづらさを抱えつつも、地域での生活をより自分らしく活(い)き活(い)きと送っていただけるように支援しています。

 ■新型コロナウイルスが感染拡大した2年前

 誰もがよく知る芸能人が相次いで感染、その後亡くなられたと報道され、スタッフはもちろん利用者も大きく動揺しました。「感染するかもしれないから外出できない」「毎日怖くて不安でどうしたらいいかわからない」「閉所したら仲間と会えなくなる」とたくさんの不安な声がありました。利用者もスタッフも今まで経験したことのない生活を余儀なくされ、この先どうなってしまうのだろうと不安な気持ちでいっぱいでした。

 ■精神科デイケアが居場所であり続けるために

 少しでも不安を払拭(ふっしょく)し以前のような地域生活を送っていただきたいと思い、自宅等での感染予防対策や、新型コロナウイルスについての勉強を利用者と一緒に行いました。今では手洗い消毒が習慣化し、さらに知識を得たことで必要以上に恐れることなく、『正しく恐れる』ことができるようになりました。何より自分たちの『居場所』を存続させるために、この難局にみんなで協力して立ち向かって行こうという意識が、利用者とスタッフ双方に芽生えてきたように感じます。

 ■通所リハビリのありかた

 「通所リハビリでも利用者が、日々の不安やストレスをお互いに話しあったり、励ましあっている場面を多く見かけます。帰り際には『また来るわ、来てよかったです』と穏やかな表情で帰宅されます。通所リハビリが人とのつながりや足を運んでよかったと思っていただける場所であることが、利用者の不安を軽減し生活の支えになっているんだと再認識できました。そのためにも基本的な感染対策を怠らず、安心して集える通所リハビリを提供し続けていきたいと思います」と通所リハビリ担当の山下翼作業療法士は語ります。

 ■こころのよりどころとして

 この2年間、世界中が制限のある生活を送ってきました。しかし、人は何かしら人との交流を求め欲していると利用者の声からも感じます。安心して集えて仲間と励まし合える場所、不安な気持ちを相談できたり生活の支えとなる場所、こころのよりどころとなる場所が誰でも必要なのです。あれから2年が過ぎた現在でも一向に収まる気配がなく、それどころかさらなる猛威を振るう予感さえする新型コロナウイルス感染症ですが、私たち通所施設は今後も利用者に寄り添い、利用者と共に、安心して通所していただける場所になるよう努めていきたいと思っています。

     ◇

 万成病院(086―252―2261)

 たなべ・みか 1994年万成病院入職。精神科デイケア係長。公認心理師。岡山精神科デイケア研究会世話人。美作市出身。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年06月06日 更新)

タグ: 精神疾患万成病院

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