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(4)おなかが痛いと思ったら 天和会松田病院外科医 勝部亮一

勝部亮一氏

 普段は元気に生活できていても、おなかが痛くなることはみなさん経験することだと思います。定期的に健診を受けていると、がんのような悪性の病気があるかどうかや痛みの原因となる病気があるかどうかについてはある程度わかりますが、その検査ではわからなかった原因がもとで痛みを起こしたり、急な原因で痛むこともあります。

 ただ、病院をすぐに受診したほうがよいか、このまま様子を見てもよいか、なかなか判断に迷うことも多いと思います。婦人科・泌尿器科の病気や心臓・血管の病気でもおなかが痛くなることがありますが、ここでは急いだほうがよい場合や消化器の病気で頻度の多いものについてお話しします。

 まず、腹痛の程度によっては受診したほうがよい場合があります=

 すぐになくなってしまうような痛みや、どことなく痛いかなというぐらいの痛みであれば、急いで受診する必要はないかもしれません。ただ、時間とともに痛みの場所がはっきりしてきたり、強くなってきたりすることがあります。痛みの強さや持続するかどうかは重要であり、動けないほどの痛みや動くと響くような痛みがある場合には、緊急手術が必要となる可能性もあるので早急に病院を受診することをお勧めします。

 痛みが軽くても続く場合や、痛み以外の症状を伴う場合にも治療が必要な病気が隠れていることがありますので、病院を受診して検査を受けてください。

 また、痛む部位である程度どのような病気か推測できます=

 胃・十二指腸潰瘍は多くの場合はピロリ菌感染が原因と考えられています。その他には喫煙・アルコール・薬の副作用・ストレスなどが原因になることがあり、胃薬を飲んでいても起こらないわけではありません。

 急性虫垂炎や急性胆嚢炎(たんのうえん)は発熱と比較的限局した痛みがあることが多く、なるべく早期の手術が必要なことがあります。大腸憩室炎は大腸にできた憩室(外向きに小さく飛び出た部分)が炎症を起こす病気です。加齢と食生活の欧米化に伴い本来右側に多かった大腸憩室が左側(特にS状結腸)にできる人が多くなっており、大腸憩室炎を繰り返したり穴が開いたりした場合には手術が必要になります。

 お酒を飲みすぎると肝臓が悪くなりますが、膵臓(すいぞう)も炎症を起こすことがあります(急性膵炎)。アルコール以外では胆石が原因となることがあり、重症の急性膵炎は命にかかわります。

 今までにおなかの手術をしたことがある人は、腸閉塞を起こす可能性があります。手術歴のある人が、おなかが張る・痛みがある・吐くといった症状がある場合には腸閉塞を疑います。おなか全体が激しく痛む場合には、胃や腸に穴が開いて腹膜炎になっている可能性があるので、急いで病院を受診してください。

 腹痛は身近な症状ですが、放置すると危険な場合もあります。おなかが痛いと思ったら、まずは病院を受診して検査を受けましょう。

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 天和会松田病院(086―422―3550)

 かつべ・りょういち 岡山高校、岡山大学医学部卒。倉敷成人病センター、中国中央病院、岡山大学病院などを経て2015年10月より現職。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年06月06日 更新)

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