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花粉症対策、専門医に聞く 矢掛病院・名部医師

名部誠医師

概論 免疫機能、不利に働く 鼻粘膜や目の結膜刺激


 花粉症は、花粉によって引き起こされるアレルギー疾患の総称。人間は体内に異物(抗原)が侵入すると、自己防衛のため抗体を作る。この免疫機能が体に不利に働く場合、アレルギー反応と呼んでいる。

 花粉が体の中に入ると、異物を認識する細胞(マクロファージ)に出合い、抗原の情報がリンパ球の一種、T細胞に送られる。さらに同じリンパ球のB細胞に情報伝達され、花粉抗原に反応する特異IgE抗体が作られる。このような抗体ができることを「感作かんさ」という。

 この抗体が、粘膜の中にあり体を外敵から守っている肥満細胞に結合。花粉抗原をつかまえると、肥満細胞が活性化し、アレルギー症状の原因となるヒスタミン、ロイコトリエンといった化学伝達物質を放出。鼻粘膜や目の結膜を刺激し、くしゃみ、鼻水、鼻づまりや涙目、目のかゆみなどが生じる=図参照。

 「こうしてアレルギー性鼻炎、結膜炎、時には気管支ぜんそく、皮膚炎などが起きる」と矢掛町国民健康保険病院の病院事業管理者、名部誠医師(内科)。「頭重感や、鼻づまりによる息苦しさから集中力が低下し、仕事や勉強の能率が落ちるなど、花粉症の苦痛は大きい」と指摘する。

 スギ・ヒノキ花粉症は、花粉が飛ぶ毎年2〜4月に発症▽天候による症状の日差変動が激しく、晴れて風の強い日に外出すると悪くなる―といった特徴がある。「インフルエンザや風邪は約1週間で回復するが、花粉症は症状が1カ月以上続く」と名部医師は話す。


飛散予測 例年よりも3割少なめ


 岡山県内の花粉飛散量は今シーズンどうなるのか―。中国・四国空中花粉研究会副代表を務める名部医師は「スギ、ヒノキの花粉飛散量は例年より約3割少ない。本格的な飛散開始は10日ほど遅く、昨年並みの2月下旬から」と予測する。

 名部医師は、スギ、ヒノキの花芽が形成され始める前年夏の気象条件を重視し、県北部の2011年6月21日〜8月6日の最高気温を積算。過去の同数値、総飛散量(毎年2月1日〜5月10日に計測)と照らし合わせた計算式で、今年の総飛散量を試算。飛散量は11年のように多かった年の翌年は減る傾向▽今年1月の花芽の着花状況観察▽最近の寒気の影響―も加味して予測を導き出した。

 予測では、飛散はスギ花粉が2月下旬から本格的に始まり、3月中旬にピークを迎え、4月初旬まで続く。ヒノキ花粉は例年通りで3月下旬から飛び始め、4月中旬にピークとなり、5月初旬に終わるという。

 飛散量が減る見込みとはいえ、県内の民有林はスギが約3万7千ヘクタール、ヒノキは3・2倍の約11万9千ヘクタールに上り、花粉症シーズンは長期にわたる。名部医師は「スギやヒノキの花粉は山地から風に乗って100キロ先まで飛び、両方の花粉症を合併している人は多い。さらに中国大陸から飛来する黄砂と重なれば、症状が増悪する」と警戒を呼び掛ける。

 身近な対策は、外出時のマスク、眼鏡の着用。「マスクは目の細かい不織布製品、眼鏡はカバー付きの専用ゴーグルなら花粉を9割近くカットできる。コンタクトレンズは眼鏡に替えた方がいい」と名部医師。雨の翌日で晴れて暖かい春風が吹く日は特に飛散量が多く、帰宅時の洗顔、うがい▽家では窓や戸をできるだけ閉める▽粘膜を刺激するたばこ、アルコールは避ける―なども留意点に挙げる=表参照。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年02月20日 更新)

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