文字 

(6)「トイレが近い」「尿が漏れる」ことで困っていませんか? 天和会松田病院泌尿器科医長 絹川敬吾

絹川敬吾氏

 それは、過活動膀胱(ぼうこう)という病気が原因かもしれません。過活動膀胱は「急に尿意をもよおし、漏れそうで我慢できない(尿意切迫感)」「トイレが近い(頻尿)」「夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)」「トイレまで我慢できずに漏らしてしまう(切迫性尿失禁)」などの症状が現れる病気です。

 40歳以上の男女の8人に1人が、過活動膀胱の症状を自覚していることがわかっています。このうち、約半数の方に切迫性尿失禁がみられます=グラフ

 過活動膀胱とは、膀胱が意思とは関係なく勝手に収縮する病気です。原因は、神経系の異常で起こる神経因性過活動膀胱と、非神経因性過活動膀胱の二つにわけられます。

 神経因性過活動膀胱は、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの神経変性疾患や外傷などにより、脳と膀胱の筋肉を結ぶ神経の回路に障害が生じて起こります。非神経因性過活動膀胱は、男性では前立腺肥大症による排尿障害を繰り返すことで発症する場合が多く、女性では出産や加齢によって子宮、膀胱、尿道などを支えている骨盤底筋が弱くなった場合などに起こります。

 過活動膀胱の症状をチェックするために過活動膀胱症状質問票(OABSS)の記入を行います=。その結果、質問3が2点以上かつ合計3点以上の場合には過活動膀胱と考えますので、泌尿器科受診をお勧めします。

 過活動膀胱の治療は、主に抗コリン薬とβ(ベータ)3アドレナリン受容体作動薬という薬があります。抗コリン薬は、膀胱の過剰な収縮を抑制します。β3アドレナリン受容体作動薬には、膀胱の緊張を和らげる効果があります。両方とも尿をためる効果が期待できます。男性では前立腺肥大症の治療を行うことで、過活動膀胱の症状が改善することがあります。その他の治療法として、膀胱訓練や骨盤底筋訓練といった行動療法も過活動膀胱の改善に効果が期待できます。

 「恥ずかしいから」「年齢のせいだから」という理由で、一人で悩んで我慢している方もたくさんいらっしゃいます。しかし、過活動膀胱の症状は薬で改善できることがほとんどです。実際に、多くの方が薬によってつらい症状から解放されています。適切な治療をして、快適な毎日を送るためにも、少しでも気になる症状があれば早めに泌尿器科を受診しましょう。

     ◇

 天和会松田病院(086―422―3550)

 きぬがわ・けいご 川崎医科大学卒業。水島中央病院、吉備高原ルミエール病院勤務、川崎医科大学衛生学講師、泌尿器科講師を経て1998年4月から天和会松田病院に勤務。ICD(インフェクションコントロールドクター)認定医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年07月04日 更新)

ページトップへ

ページトップへ