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(2)市民病院で産む理由~「良い分娩施設」とは~ 岡山市立市民病院マタニティセンター・産婦人科主任医長 佐々木佳子

佐々木佳子氏

 近年、日本では急速に少子化が進み、2000年に119万人だった全国の出生数は年々減り続け、20年には84万835人、21年には81万1604人となっています。1人の女性が生涯に産む見込みの子供の数を示す「合計特殊出生率」は、6年連続で減り続け、21年は1・30でした。

 岡山県も同様の動きを見せており、00年に1万9059人だった出生数は20年には1万3521人となり、20年の合計特殊出生率は1・48になっています。

 一方で、出産の高齢化も進んでおり、19年の出産年齢は3~4人に1人が高齢出産(35歳以上で初めて出産すること)でした。

 少子化が進む上、一生のうち何度もない大切な出産。妊娠が分かってから産後まで何度も通院する産院選びはとても重要です。分娩施設を選ぶ際は「出産で重視したいことは何か」を考えることが大切です=表1

 分娩施設の種類には、総合周産期母子医療センター、地域周産期母子医療センター、総合病院、個人病院、助産院があります=表2

 総合病院である岡山市立市民病院では、麻酔科医の協力の下で緊急帝王切開を行うことができるほか、母体の救命救急への対応で内科・外科の協力を得ることができるため、分娩施設を選ぶ上で重要なポイントになると考えられます。

 医療が進歩した現在でも、出産が命がけの行為であることに変わりはありません。妊娠中に問題なく過ごし、リスクの少ない妊婦であっても同じことです。

 また、妊娠は病気ではありませんが、病気になる可能性がある状態です。当院では、妊娠中に発症・判明した病気や、さまざまな合併症への対応・診断が可能です。休日夜間の対応も行っています。対応困難な病態や、早産が予想されると判断した場合には、当院に在籍する5人の産婦人科専門医が、適切な時期に適切な施設で分娩を行えるよう、周産期母子医療センターへ紹介の手続きを行います。

 「分娩施設を選ぶポイント」を表1に提示しました。当院はJR北長瀬駅に隣接しており、妊娠中の通院に大変便利です。個室もあり、ご希望により母児同室も可能です。経験豊かなスタッフも多く、産後ケア入院(出産後のお母さんの心身をいたわり、休養や栄養管理、母乳や沐浴(もくよく)の仕方などの育児指導を入院生活の中で助産師が専門的に行うこと)も可能です。

 総合病院ならではの安全に配慮した妊娠管理・分娩を行える施設であると自負しています。岡山県には34の分娩施設があります。母体・胎児の健康状態はどうか、何を重視したいか、どんな出産をしたいか、よく考えて、ご家族とも相談して納得のいく分娩施設を選んで下さい。

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 岡山市立市民病院(086―737―3000)

 ささき・けいこ 香川医科大学(現香川大学医学部)卒。岡山大学病院、福山医療センター、岡山済生会総合病院、兵庫県立こども病院(NICU)、岡山赤十字病院等を経て2020年から岡山市立市民病院勤務。日本産科婦人科専門医・指導医、日本周産期新生児医学会周産期専門医・指導医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年07月18日 更新)

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