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早期咽頭がんの内視鏡検診開始 岡山大病院、負担少なく発声温存

通常の胃カメラ用(中央)よりも細い咽頭がん検診用の内視鏡(右)。左はハイビジョン精密検査用

内視鏡検診の際に吐き気を防ぐ特殊なマウスピース

河原祥朗講師

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は今月から、咽頭表面に発症する早期咽頭がんの発見と治療に向けた内視鏡検診を始めた。咽頭がんは早期発見が難しく、高画質内視鏡と患部を簡単に特定できる画像システムを導入。治療は、内視鏡と特殊なナイフで患部だけを切り取る内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行い、咽喉頭を温存して発声機能を残す。

 同大病院によると、早期咽頭がんに特化した検診システムは世界でも珍しいという。光学医療診療部の河原祥朗講師は「発声の温存は患者にとって大きなメリット。QOL(生活の質)改善や死亡率の低下に貢献したい」としている。

 咽頭がんの10万人当たりの発症率(2008年)は男性7・7人、女性2・9人。喫煙や飲酒が大きく関係し、増加傾向にある。早期の自覚症状はほとんどないため進行した状態で見つかることが多く、5年生存率は40〜50%と低い。

 同大病院では、内視鏡から特殊な波長の光を照射し、咽頭がんの部位を特定する画像システム(日本製)を導入。患者の咽頭部に簡単な麻酔をかけ、通常の胃カメラ(直径約11ミリ)よりも細い専用の内視鏡(同7・7ミリ)を挿入して調べる。

 舌の根元に器具が当たると吐き気が起こるため、内視鏡などが舌に当たらないよう工夫した特殊なマウスピースを併用する。検査時間は5分程度。

 がんが見つかった場合、内視鏡に取り付けた特殊なナイフで患部だけを切除。咽喉頭を全部摘出する外科手術よりも身体の負担は少なく、入院も平均10日と外科手術の半分以下になるという。

 検診の対象は、咽頭がんの発症リスクが高くなる食道がんや頭頸(けい)部がん患者のほか、飲酒や喫煙習慣のある人。河原講師は「治療は耳鼻咽喉科や歯科と協力して行う。50歳以上の男性は発症率が高いため特に気を付け、定期的な検診を」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年04月04日 更新)

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