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(4)脳卒中センターコア施設としての役割~カテーテル治療と顕微鏡手術~ 岡山市立市民病院脳疾患センター長・脳神経外科診療部長 徳永浩司

徳永浩司氏

 脳卒中克服のための全国レベルの取り組みとして、2019年から脳血栓溶解剤投与が可能な一次脳卒中センター(PSC)の認定が始まりました。岡山県内には22年3月時点で13カ所のPSCがあります。

 岡山市立市民病院は、その中でもより充実した専門的治療を24時間365日行えるPSCコア施設となっています。岡山市を含む岡山県南東部医療圏では唯一となります。他のPSCからの紹介患者さんを数多く引き受けており、2年以上に及んだ新型コロナパンデミック下では感染症を持つ脳卒中患者さんにも対応できる体制づくりと設備の改修を進めてきました。

 PSCコア施設の重要な責務は、発症後間もない脳梗塞患者さんを受け入れ、必要に応じて脳血栓回収術を行うことです。言語障害や手足の麻痺(まひ)、意識障害などを発症した患者さんに対して直ちに診察とCT、MRI検査を行い、太い脳動脈に閉塞があるのか、血栓溶解剤投与や血栓回収をすべきなのか、迅速に判断します。無理な治療ではかえって悪化する可能性もありますので、当院では、治療で救済可能な脳の体積を自動的に数字で示すCT灌流(かんりゅう)画像検査を行い、判断に役立てています。

 血栓回収術では、足の付け根の動脈から血栓回収カテーテルを頭蓋内まで誘導し、血栓を捕捉・回収し脳動脈を再開通させます=。広範囲の脳を救うためには、発症から再開通までの時間短縮が必要です。当院では、スマートフォンに医療関係者間通信アプリを導入し、夜間休日でも速やかな治療開始につながる画像情報の共有や意見交換、他院との画像連携を可能にしています。

 さらに、PSCコア施設には脳卒中相談窓口の設置が求められます。窓口では相談員が、当院で治療した脳卒中患者さんとご家族のお話を聞き、医療や介護などの情報を提供して支援しています。

 脳卒中に対するカテーテル治療としては、他にもくも膜下出血に対する脳動脈瘤コイル塞栓術などがあります。また症状が出る前の予防的なカテーテル治療として、フローダイバーターを用いた脳動脈瘤治療、頚(けい)動脈ステント留置術、脳動静脈奇形塞栓術なども行っています。

 カテーテル治療が適当でない病変には、脳動脈瘤クリッピング術、バイパス術、頚動脈内膜剥離術などの外科的手術を行います。

 こうした脳神経外科手術を肉眼のみで行うのは不可能で、1ミリ以下の精度が要求される操作には、手術用顕微鏡の助けが必要になります。最近の顕微鏡には、高倍率高精細な手術野の視認、安定した操作性、ナビゲーションとの連動性、血管や腫瘍を造影する能力などが求められます。当院では本年度中に新しい手術顕微鏡を導入する予定です。

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 岡山市立市民病院(086―737―3000)

 とくなが・こうじ 岡山大学医学部卒業。香川県立中央病院、国立岡山病院、ジュネーブ大学病院、岡山大学病院などを経て2014年岡山市立市民病院入職。21年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会指導医、日本脳神経血管内治療学会指導医、日本脳卒中の外科学会技術指導医。医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年09月05日 更新)

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