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AIが潰瘍性大腸炎悪性度を診断 岡山大病院教授らシステム開発

内視鏡で撮影した患部周辺の画像(左)とAIが診断をした画像(右)。暖色の部分はAIが着目した箇所で腫瘍ができている可能性がある(岡山大病院など提供)

河原祥朗教授

 岡山大病院の河原祥朗教授(消化器内視鏡)らは、内視鏡画像から人工知能(AI)が潰瘍(かいよう)性大腸炎の悪性度を診断するシステムを開発した。現在の精度は79%。他の医療機関に協力を求めて診断能力を向上させた後、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認を取得して臨床応用したい考えだ。

 潰瘍性大腸炎は、大腸内壁の粘膜が炎症を起こしてただれる原因不明の疾患。腹痛などの症状が出るクローン病と合わせて「炎症性腸疾患」と総称される国の指定難病。河原教授らによると、国内の患者は計20万人以上と推計されており、近年増加傾向にある。放置するとがんを発症するケースもあるという。

 グループは同大病院と住友別子病院(愛媛県新居浜市)を受診した患者や健康な人の82人の内視鏡画像約637万枚分を、AIに「ディープラーニング(深層学習)」させた。186枚の画像でテストした結果、悪性度の高低を79%の精度で的中させた。

 潰瘍性大腸炎の診断は現在、内視鏡画像や大腸の細胞を採取して調べるが、症例が少なく医師の経験などによるところが大きいという。「専門医がいなくても確度の高い診断が可能になる技術。精度を9割近くまで高めるのが目標」と河原教授。

 悪性度のレベルは5段階あり、症状が重い2段階では大腸を全て摘出する手術が必要になる場合もある。悪性度が低い3段階では内視鏡の先に付いたナイフで患部を取り除く治療などが選択される。

 今回のシステムでは悪性度が高いか低いかしか判断できない。河原教授は「他の医療機からも症例データを集め、将来的には細かいレベルの診断や、内視鏡によるリアルタイム診断も実現させたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年09月05日 更新)

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