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出会った患者との交流小説に 慈圭会精神医学研究所所長・青木さん

小説「ぼくらの心に灯ともるとき」を手にする青木医師。「今、引きこもっている人やサポートしている人にも手に取ってもらえたら」と話す

 慈圭会精神医学研究所(岡山市南区浦安本町)の所長を務める精神科医・青木省三さん(70)が、これまで出会った患者との交流を基にした小説「ぼくらの心に灯(ひ)ともるとき」(創元社)を出版した。瀬戸内の小さなまちで、人々が支え合いながら生きていく様を温かく描く。

 青木さんは40年以上にわたって精神科医療に携わり、生きづらさを抱える青少年に向き合ってきた。人間関係のつまずき、言葉やしぐさのちょっとした違いなどをきっかけに、孤立し行き詰まった人たちの声に時間をかけて耳を傾け、寄り添ってきた。新型コロナウイルス禍で、自宅で過ごす時間が増えた2020年、「どんな人もその人らしく地域社会で生きていけるように」という、長年の思いを込めて筆を執った。

 舞台は小さなジャズバー。周囲になじめず不登校だった女性や、相手の反応を見ずに話し続ける男性、母親に反抗して不良グループに加わっていた過去を持つ女子学生などが代わる代わる訪れる。マスターを相手に自分を語り、家族との関係や生き方に悩みながらもそれぞれの居場所を模索していく。

 登場人物には、患者や自身の姿を投影させたという。「健康であれ病気であれ、人は皆大なり小なり苦しみや悩みを抱えて生きている」と青木さん。「少し変わっているように見えたり、個性が目立ったりといった人を、十分に受け入れられるよう社会が変化していく必要がある」と訴える。

 四六判。208ページ。1540円。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年09月13日 更新)

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