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(6)新しい消化器内視鏡診療について 岡山市立市民病院内視鏡センター長・消化器内科主任部長 西村守

西村守氏

 医療技術の進歩により、以前は手術などでしか治療できなかった消化管腫瘍や炎症による合併症は、近年、体への負担がより少ない内視鏡を使った治療が行われるようになりました。今回はそのうち二つについて紹介させていただきます。

 一つめは十二指腸、大腸腫瘍を切除する治療についてです。

 十二指腸や大腸は腸の壁が薄く、内視鏡で腫瘍を切除する際、腸に穴が開いてしまう穿孔(せんこう)の危険があります。従来、それを避けるため、腫瘍の下に液体を注射して腫瘍を持ち上げ、スネアという針金の輪っかで焼き切る方法が行われてきました。注射をする場所によってはスネアがかけにくかったり、時間がかかったりする場合がありました。

 しかしここ数年、腫瘍の周囲に水をためるだけで腫瘍の下に水が浸透し、注射をすることなく、腫瘍そのものが持ち上がり切除できることが分かってきました=図1

 現在当院ではこの方法を積極的に行い、短時間で腫瘍の切除ができるようになっています。実際、穿孔などはほとんどなくなっています。大腸腫瘍の場合は多くが日帰りで治療できますし、十二指腸腫瘍でも数日の入院で済み、入院期間は短縮されました。

 二つめは超音波内視鏡を使った治療についてです。

 超音波内視鏡治療は、先端に超音波の装置を付けた特殊な内視鏡で、腸管の下にある臓器などに対し精密な検査を行います。最近では、内視鏡から長い針を出して、腸管の外にある病気の部位から細胞を採取して診断できるようになっています。特に膵臓(すいぞう)など体の真ん中にあり、細胞を取ることが難しい場所での診断には必須となってきています=図2

 超音波内視鏡は、液体の塊がおなかにたまる膵仮性のう胞や、胆のう内に膿(うみ)がたまる胆のう炎の治療にも応用しています。これは、針からガイドワイヤーという細い針金を入れ、最終的にプラスチックのような管を入れ、膿などを取り出す治療です。

 当院でも3年前より導入し治療件数が増えています。開腹手術等に比べ体の負担は小さく、全身麻酔なども必要ないため体の弱った方でも治療が可能です。

 また、大きな総胆管結石においては、胆道鏡という通常の内視鏡よりさらに細い内視鏡で結石を破砕して取り出す方法も導入しています。

 内視鏡検査機器の発達により、患者さんにはより優しい医療が提供できると考えられます。当院でもこのような新しい治療を積極的に取り入れ、患者さんを受け入れられる体制を整えていきます。

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 岡山市立市民病院(086―737―3000)

 にしむら・まもる 岡山大学医学部卒業。同大学医学部第一内科入局。香川県立中央病院、井原市立市民病院、岡山大学医学部第一内科勤務を経て2001年、岡山市立市民病院内科に赴任。日本内科学会認定内科医・指導医、日本消化器病学会消化器病専門医・指導医・中国支部評議員、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医・中国支部評議員など。

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年10月04日 更新)

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