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(3)直腸がん外科治療にロボット手術を導入 津山中央病院外科部長ロボット・内視鏡外科手術センター長 西崎正彦

ダヴィンチシステムを使って行われた直腸がんの手術=津山中央病院

直腸がんロボット手術に携わる手術室スタッフ

西崎正彦氏

 当院では手術支援ロボット「ダヴィンチX」を導入し、2019年より泌尿器科と呼吸器外科領域でロボット支援手術を行っています。また、同年ダヴィンチに対応した新手術室も造設され、手術室スタッフもロボット手術に積極的に取り組んでいます。

 消化器外科分野では21年12月に胃がんに対するロボット支援手術を開始しました。直腸がんに対しても施設基準、術者基準を満たしましたので、本年4月よりロボット支援手術を開始し、現在までに胃がん、直腸がん合わせて20例を超え、外科スタッフもロボット手術に習熟し、合併症の少ない手術を達成してきています。

 消化器外科分野では10年前より傷が小さく体に負担の少ない低侵襲治療として腹腔鏡(ふくくうきょう)手術を本格的に導入し、外科一同研さんを積んできました。その発展型としてのロボット支援手術には多くのメリットがあります。例えば、3Dカメラでリアルな立体画像の拡大視野、多関節機能をもつ鉗子(かんし)、手振れ防止機構などにより腹腔鏡手術で難易度の高い部位でも安全で緻密な手術操作を行うことができ、出血量も少ない点などが挙げられます。

 直腸がんに対しては特に骨盤腔内の操作で威力を発揮します。狭い空間でも多関節機能により適切な角度、切開深度を保ちながら鋭的に鈍的に思い通りの切離が可能です。

 直腸がんでは術後の局所再発が一定の割合で生じますが、ロボット手術では直腸間膜全切除(TME)の達成率が開腹手術や腹腔鏡手術より高くなる可能性があり、局所再発率を下げることが期待されています。

 また、自律神経温存を確実に行うことで排便機能・排尿機能・性機能の温存にも寄与することが示唆されています。

 下部直腸がんでは骨盤内リンパ節に転移を生じることがあり、その場合内外腸骨動脈領域のリンパ節郭清(側方郭清)を行います。尿管や神経、動静脈が複雑に絡み合う部位でのリンパ節郭清になりますが、やはりここでもロボット手術の威力が発揮されることで根治度の上昇が期待されています。難易度の高い手術ですが、当科でも合併症なく行うことが可能でした。

 また、ロボット手術はチーム医療として機能しています。ロボット手術の導入前には外科医・手術室看護師・臨床工学士でチームとして他施設への見学、入念なシミュレーションを行い、手術中もチームとして連携しながらロボット手術を安全に行っています。

 今後は結腸がんやすい臓がん治療にもロボット手術を導入する予定で、地域を支える一環として消化器外科領域でも最先端の高度医療を提供していきます。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 にしざき・まさひこ 岡山大学卒、岡山大学大学院博士課程修了。広島市立広島市民病院、岡山大学病院を経て2021年より津山中央病院に勤務。医学博士。外科専門医・指導医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医、ダヴィンチコンソールサージョン。岡山大学臨床教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年10月17日 更新)

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