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(1)虚血性心疾患~90分が勝負 急性心筋梗塞~ 心臓病センター榊原病院副院長 廣畑敦(循環器内科)

廣畑敦氏

 急性心筋梗塞という病気をご存じでしょうか。心臓の血管(冠動脈)が閉塞して血液が流れなくなり、心臓の筋肉が壊死(えし)してしまう病気です。

 典型的な症状としては「胸が締め付けられるような」あるいは「心臓に火箸(ひばし)を当てられたような」激しい痛みを伴います。

 急性心筋梗塞は以前には死亡率の高い病気でした。しかし、治療方法がこの20~30年で劇的に変化し、最近では閉塞した冠動脈をカテーテルという細い管を使用してステントという金属の筒を入れて再開通させ、心筋の壊死を減らす「再潅流(かんりゅう)療法」を早急に行う治療が主流となっています=写真。このカテーテル治療をすぐに行うことで、急性心筋梗塞の死亡率は20年前の半分以下となっています。

 急性心筋梗塞になってしまった場合には一刻も早く病院に行って治療を受けることが大事といえます。最近では「病院のドアを入ってから閉塞した冠動脈を再開通させるまでの時間が90分以内であれば死亡率が低い」というデータが学会から示されています。冠動脈が閉塞した時間が短いほど、壊死する心筋が少なく、不整脈、心不全などの合併症が低くなるためです。

 ただ、90分以内にカテーテル治療を成功させることは簡単ではありません。病院に着いて問診、診察、それから検査、治療に至る経過がスムーズでなければあっという間に時間は過ぎてしまいます。それには病院内でのスタッフの連携が非常に重要です。医師のみならず、看護師、技師といった多くの職種が同じ目的意識を持って動く必要があります。

 さらに、急性心筋梗塞は日中のみならず夜間いつでも起こる可能性がある病気です。これを前もって予測するのは難しいため、24時間365日いつでも緊急で病客様を受け入れて早急に心臓カテーテル治療が行える体制が病院には必要とされます。

 心臓病センター榊原病院では、いつでもこのような病客様をお断りすることなく受け入れる体制が整っていますので、ご相談いただけたらと思います。

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 心臓病センター榊原病院(086―225―7111)

 ひろはた・あつし 香川県大手前丸亀高校、岡山大学医学部卒。岡山大学病院、津山中央病院、米国スタンフォード大学循環器内科などを経て2006年から心臓病センター榊原病院に勤務。19年から現職。医学博士。日本内科学会認定内科医・指導医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年10月17日 更新)

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