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(4)脳梗塞と不整脈 心臓病センター榊原病院循環器内科医長 橘元見

 脈は心臓の拍動であり、検脈といって、手首に指を当て、脈を測ると、心臓の鼓動を感じることができます。脈の異常は、速い、遅い、止まる、飛ぶなどがあり、不整脈といいます。不整脈は20種類以上あり、その中の一つである心房細動は、心臓のリズム(脈)がバラバラになって、不規則に心臓が動いてしまう不整脈です。心房細動は年齢とともに増加し、日本人では、100万人以上の心房細動患者さんがいるといわれています。

 心房細動になると三つの問題が出てきます。一つ目は脈が不規則に乱れ、速くなりすぎたり遅くなりすぎたりすることで、動悸(どうき)、息切れ、めまいなどの症状が出ます。二つ目は、脈が速すぎる状態が持続することで心臓の動きが悪くなり、心不全を発症することがあります。三つ目は、心臓の中の血流が停滞して血栓ができ、その血栓が血流に乗って全身の血管を閉塞させてしまう塞栓症であり、脳に血栓が飛んでしまうと、脳梗塞になってしまいます。

 心房細動による脳梗塞は、脳梗塞の原因の2割といわれており、比較的範囲の大きな脳梗塞となりやすく、後遺症が残ることも多いです。心房細動があっても、症状を感じにくい場合もあり、知らず知らずのうちに進行し、心不全や脳梗塞が起きた後に、心房細動が原因であったと分かることもあります。このため、心房細動を早期に発見して治療することが重要となり、ご自身での検脈や、定期的な健康診断で心電図をとることが勧められています。

 心房細動の治療は薬物療法とカテーテルアブレーションという手術に分けられます。薬物療法は、脈拍を適正範囲に調整する薬や脈のリズムを整える薬と血栓予防の薬があり、血栓予防の薬を内服することで、脳梗塞の発症率を抑えることができるとされています。

 カテーテルアブレーションは鼠径部(そけいぶ)の血管からカテーテルという細い管を心臓まですすめ、心房細動の原因となる心臓の筋肉を焼灼(しょうしゃく)する手術です。年齢や心房細動の持続期間により効果があるかどうかを患者さんごとに検討して行っており、薬物療法と組み合わせることで高い治療効果が得られます。

 カテーテルアブレーションは近年、心房細動の症状を抑えるだけでなく、心房細動患者さんにおける心不全や認知症発症を予防する効果が期待されています。

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 心臓病センター榊原病院(086―225―7111)。

 たちばな・もとみ 愛媛大学医学部卒業。岡山大学関連病院で勤務し2017年から心臓病センター榊原病院循環器内科勤務。日本内科学会認定医、日本内科学会認定内科専門医、日本不整脈心電学会不整脈専門医、ICD/CRTD履修者、心臓リハビリテーション指導士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年12月05日 更新)

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