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(7)新ドクターカー運行から半年、地域の救命率が向上 津山中央病院救命救急センター長 前山博輝
■救急医療体制と当院の位置付け
津山中央病院は岡山県北の津山市に立地しており、岡山県北に存在する唯一の救命救急センターを有している。岡山県美作地域と兵庫県の一部(面積にして大阪府の約1・5倍)に住む人口23万人の救急医療を担っている。
岡山県北において緊急カテーテル、ECMO(体外循環回路による人工心臓を使用した治療)、緊急手術、集中治療を行えるのは当院のみであり地域救命の最後の砦(とりで)として地域医療を守り続けている。県北の救急搬送の約半数にあたる年間約5千台の救急車を受け入れている。
■新ドクターカーシステム開始
2022年4月から新しいドクターカー事業が開始されることとなった。
新ドクターカーの車両は地元の会社から寄贈を受け、ドライバーも独自に雇用した。運行日数は平日日中50週(約250日)と拡充し、運行範囲も今までの津山圏域だけでなく美作市・西粟倉村・真庭市・新庄村が追加され、大阪府の1・5倍の面積をカバーすることができるようになった。
ドクターカー要請から出動までの時間をより短くするため、消防の指令センター(119番要請を受ける消防部門)と連携し救急車出動と同じ仕組みで要請を受けられるようにした。今まで7分かかっていたドクターカー要請から出動までの時間が1分となり、日本でも一、二を争う速さで出動することが可能となった。
また救急現場の場所もドクターカーの医師のスマートフォンに地図伝送されるようになり、よりスムーズな運行ができるようになった。半年の運行で350件の要請があり、本年度は年間700件ほどの要請見込みとなっている。これは中四国のドクターカー要請件数でも一、二を争う数であり、地域での活用が十分になされている証拠であると考えている。
■効果のあった事案
中年男性が反応がないとのことで救急要請、ドクターカーも同時要請。心停止の状態であり救急隊とドクターカースタッフで協力し蘇生、電気ショックを行った。ドクターカーの医師の診察の結果、急性心筋梗塞の可能性が高く、病院内に救急医師と循環器医師の招集とカテーテル室の準備を指示した。病院到着しそのままカテーテル室へ入室後、人工心臓が装着され急性心筋梗塞の診断でカテーテル治療、患者は後遺症なく社会復帰した。
今後の課題は運行日、時間の拡大である。現在の平日日中運行から土日祝日も合わせた365日対応かつ夜間対応まで拡充していく予定である。またドクターカーの充実だけでは地域救急医療の充実は達成できず、消防機関や院内体制を巻き込んだシステムの充実、質の向上も同時に行い地域住民の方々の安心安全、患者予後の一層の改善を目指していきたい。
◇
津山中央病院(0868―21―8111)
まえやま・ひろき 岡山大学卒。ドクターヘリ出動日本一を誇る兵庫県但馬救命救急センターで約8年の修練を積み、2020年から現職。ドクターヘリやドクターカーの知識技術を競う全国大会で優勝歴あり。救急科専門医、麻酔科専門医、集中治療専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
津山中央病院は岡山県北の津山市に立地しており、岡山県北に存在する唯一の救命救急センターを有している。岡山県美作地域と兵庫県の一部(面積にして大阪府の約1・5倍)に住む人口23万人の救急医療を担っている。
岡山県北において緊急カテーテル、ECMO(体外循環回路による人工心臓を使用した治療)、緊急手術、集中治療を行えるのは当院のみであり地域救命の最後の砦(とりで)として地域医療を守り続けている。県北の救急搬送の約半数にあたる年間約5千台の救急車を受け入れている。
■新ドクターカーシステム開始
2022年4月から新しいドクターカー事業が開始されることとなった。
新ドクターカーの車両は地元の会社から寄贈を受け、ドライバーも独自に雇用した。運行日数は平日日中50週(約250日)と拡充し、運行範囲も今までの津山圏域だけでなく美作市・西粟倉村・真庭市・新庄村が追加され、大阪府の1・5倍の面積をカバーすることができるようになった。
ドクターカー要請から出動までの時間をより短くするため、消防の指令センター(119番要請を受ける消防部門)と連携し救急車出動と同じ仕組みで要請を受けられるようにした。今まで7分かかっていたドクターカー要請から出動までの時間が1分となり、日本でも一、二を争う速さで出動することが可能となった。
また救急現場の場所もドクターカーの医師のスマートフォンに地図伝送されるようになり、よりスムーズな運行ができるようになった。半年の運行で350件の要請があり、本年度は年間700件ほどの要請見込みとなっている。これは中四国のドクターカー要請件数でも一、二を争う数であり、地域での活用が十分になされている証拠であると考えている。
■効果のあった事案
中年男性が反応がないとのことで救急要請、ドクターカーも同時要請。心停止の状態であり救急隊とドクターカースタッフで協力し蘇生、電気ショックを行った。ドクターカーの医師の診察の結果、急性心筋梗塞の可能性が高く、病院内に救急医師と循環器医師の招集とカテーテル室の準備を指示した。病院到着しそのままカテーテル室へ入室後、人工心臓が装着され急性心筋梗塞の診断でカテーテル治療、患者は後遺症なく社会復帰した。
今後の課題は運行日、時間の拡大である。現在の平日日中運行から土日祝日も合わせた365日対応かつ夜間対応まで拡充していく予定である。またドクターカーの充実だけでは地域救急医療の充実は達成できず、消防機関や院内体制を巻き込んだシステムの充実、質の向上も同時に行い地域住民の方々の安心安全、患者予後の一層の改善を目指していきたい。
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津山中央病院(0868―21―8111)
まえやま・ひろき 岡山大学卒。ドクターヘリ出動日本一を誇る兵庫県但馬救命救急センターで約8年の修練を積み、2020年から現職。ドクターヘリやドクターカーの知識技術を競う全国大会で優勝歴あり。救急科専門医、麻酔科専門医、集中治療専門医。
(2022年12月19日 更新)
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