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(4)運動器カテーテル治療 岡山旭東病院循環器内科部長 吉岡亮

吉岡亮氏

 われわれは、年をとるにしたがって体のいたる所が痛くなってきます。例えば四十肩、五十肩と言われる肩関節周囲炎や、より状態が進行した凍結肩などは、これまで痛み止めの薬を飲む、あるいは湿布などで痛みをある程度抑えるなど、いわゆる対症療法と呼ばれる治療法しかありませんでした。

 関節の長引く痛みの原因として、最近になり、人間には正常な血管だけではなく、病気の原因になってしまう「異常な血管」があり、その異常な血管によって痛みが引き起こされることが分かってきました。

 特に五十肩や腰痛、膝の痛みをはじめとした、治りにくい関節の痛みには、異常な血管(いびつな構造でモヤモヤとして見えるため、モヤモヤ血管と呼んでいます)が存在することが報告されています。

 モヤモヤ血管が長い間、炎症部位にとどまった場合、その血管のそばに病的な神経も増殖することが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、モヤモヤ血管内の血流が増えることで局所の組織圧が高まり、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。

 一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなると言われています。

 痛みの原因となるモヤモヤ血管を無くす方法として、「運動器カテーテル治療」という方法がここ数年、日本で行われるようになってきました。

 運動器カテーテル治療とは、カテーテルという細いチューブを血管の中に進めて患部に近づき、血管の中からモヤモヤ血管を撃退する方法です。太さ0・6ミリという、極めて細いカテーテルの中から、病的血管のみを塞栓する薬剤を投与し、モヤモヤ血管を塞栓していきます。

 薬剤は、短時間で溶けてしまう粒子を用います。病気で新しくできた異常なモヤモヤ血管は血管としてはもろく不完全であるため、ごく短時間の塞栓でも簡単に消失してしまいます。

 一方で、正常な血管は頑丈であり、しばらく血流が滞ったとしても、血流が再開するまで問題なく耐えられるため、病的血管だけを選択的に無くすことができます。

 この治療は現時点では保険外治療であるため、治療する施設が限られていますが、アメリカのFDA(食品医薬品局)が膝関節炎に対して先進医療として認可したことを受け、最近非常に注目されてきています。

 長引く肩の痛みに悩まれている方は、このような治療法も検討されてみてはいかがでしょうか。

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 岡山旭東病院(086―276―3231)

 よしおか・りょう 自治医科大学卒業。岡山赤十字病院で初期研修後、同病院循環器内科、心臓病センター榊原病院等の勤務を経て、2021年9月より現職。総合内科専門医、循環器内科専門医、日本心血管インターベンション治療専門医など。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年12月19日 更新)

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