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旭川児童院 “長寿”入所者増える 医療進歩とケア充実 平均45歳超

旭川児童院での「長寿を祝う会」で、Vサインをして職員らと写真に納まる町美和子さん。医学の進歩の恩恵で入所者も高齢化している(同児童院提供)

 社会福祉法人・旭川荘(岡山市北区祇園)の心身障害児・者施設「旭川児童院」(同所)で入所者の高齢化が進んでいる。児童院の名の通り、重い障害がある子どものために造られた施設だが、入所者350人の平均年齢は45歳と5カ月。昨年にはそのうちの1人が初めて88歳の米寿を迎えた。開設から半世紀あまり。医学や医療体制の進歩、充実で施設の様相は変わってきている。

 同児童院は在宅介護が難しい重度心身障害児を抱える家族の要望を受け、設置を計画。国や岡山県の助成、浄財などを基に1967年、中四国地方で初となる重度心身障害児施設として開設された。

 当初、80人ほどだった入所児の平均年齢は10歳余り。重度心身障害児は脳性まひなどを起因とする障害の重さから「当時は長生きできないと考えられていた」(同児童院)といい、成人に達した際は成長を祝うイベントを開いていた。

 時代の流れとともに、入所者の見守りに欠かせない人工呼吸器など医療機器の性能が向上。看護師ら医療スタッフのケア体制も徐々に安定し、入所者のケアを巡る環境は改善されていった。

 現在、17歳以下の未成年は23人で、入所者全体に占める割合は6・6%と1割以下まで低下。これに対し、60歳以上は86人と24・6%に上っている。9月には「長寿を祝う会」を初めて開き、本年度中に75歳を迎える6人を職員らで祝福した。

 4歳で脳に障害を負い、旭川児童院に入所している町美和子さん(74)の兄の町高正さん(82)は「これほど長く元気でいてくれるとは思っていなかった。本人は好きな本を読んで楽しく暮らすことができている。家族として本当にうれしい」と言う。

 旭川荘の末光茂理事長は入所者が高齢となっても院内で元気に暮らせる現状を歓迎する一方、「親やきょうだいが先に亡くなるケースが増え、重篤な病気になった場合に治療方針を決めづらいなど課題も生じている」と指摘。「最後までいかに自分らしく生きてもらうか。本人の意思を尊重できるよう、これまで以上に寄り添ったケアが必要」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年12月24日 更新)

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