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(4)赤ちゃんの赤い斑点―乳児血管腫の早期治療― 国立病院機構岡山医療センター形成外科医長 末延耕作

末延耕作氏

 【乳児血管腫とは】

 乳児血管腫(いちご状血管腫)とは、生後2週間ごろより赤い斑点ができ、盛り上がり始め数カ月で大きくなり、イチゴのように赤く盛り上がった形状のものをいいます。ピークは1歳ごろで、その後はゆっくりと数年をかけて消えていきますが、多くはあとが残ります。

 以前は無治療とされていましたが、最近では早期よりプロプラノロール内服治療や色素レーザー治療を行うようになってきました。こうした治療を行うことによって、赤みを早期に消したり、あとを残さずきれいに治すことができるようになりました。

 【治療】

 乳児血管腫の治療には内服療法、レーザー照射療法、外科的治療があげられます。

 内服療法はプロプラノロールという薬を内服します。この薬は低血糖や心拍数の低下、低血圧、呼吸困難などの副作用がありますので、入院し少量から内服を開始します。入院中に飲ませ方や注意事項の説明を行い、適切な量まで増量してから退院となります。内服は原則として24週間継続します。

 レーザー照射療法は色素レーザーを用いて治療を行います。2週間から1カ月に1回程度外来通院し、経過をみながら医師が必要と判断した際にレーザー照射を行います。

 外科的治療は血管腫のあとが残ってしまった場合等に行います。

 いずれの治療も保険適応となっています。

 【当院における治療】

 当院では赤い乳児血管腫(局面型、腫瘤型)に対してはレーザー治療、青い乳児血管腫(皮下型)、血管腫が目の周りや全身にあるものに対しては内服療法を行っています。年間200件ほどの症例数がありますが、そのうち94%はレーザー治療のみで良好な結果が得られています。

 無治療であれば血管腫が消えるまで6~7年かかりますが、血管腫の出現初期に治療を行うと、ほとんどの症例で治療開始より半年程度であとかたもなく消失させることができています。

 当科では来院していただいた当日に十分な説明を行い、納得していただいた上で治療を行っています。

 治療は生後早期から開始できますので、赤ちゃんに赤い点状のふくらみがでてきた際には、なるべくはやくご相談ください。

     ◇

 国立病院機構岡山医療センター(086―294―9911)

 すえのぶ・こうさく 川崎医科大学卒業、同大学大学院修了。2004年より現職。日本形成外科学会専門医、領域指導医、小児形成外科分野指導医、レーザー分野指導医、再建、マイクロサージャリー分野指導医、日本創傷外科学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年01月16日 更新)

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