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(2)アイフレイル対策~目の健康寿命をのばそう~ 倉敷平成病院眼科医長 石口奈世理

石口奈世理氏

 近年、「フレイル」という概念が広がってきています。フレイルとは、加齢により心身が弱る状態のことで、健康な状態と要介護状態との中間に位置づけられています。

 厚生労働省は健康寿命延伸に向けた施策の柱の一つとして「フレイル対策」を挙げており、2020年から「フレイル健診」が全国で開始されています。フレイルの時点で適切に介入し、機能の維持や回復をはかり、要介護にならないようにして、健康寿命をのばすことを目指しています。

 ■アイフレイル対策

 アイフレイルとはアイ(目)のフレイル、つまり加齢による目の機能低下です。加齢とともに、目は構造的にも、機能的にもさまざまな面で衰えてきます。そこに外的要因(生活習慣や喫煙、薬剤など)や内的要因(強い近視や糖尿病、遺伝など)が加わることで、いろいろな目の病気を生じやすくなります。アイフレイルを早めにケアすることによって、目の健康寿命を延ばそうという取り組みがアイフレイル対策です。

 アイフレイル対策は三つの目標を掲げています=図1。アイフレイルに適切に対応することで、生涯にわたって見える目を守り、日常生活に困難を生じたり要介護状態になることを予防し、読書やスポーツ、趣味などを楽しむ豊かな生活を送れることを目指しています。

 「以前よりも見えにくい」「まぶしい」「なんとなく目に不快感がある」などの目の不調を感じた時、今までは「歳(とし)のせいだからしょうがない、気にしないようにしよう」と思っていたかもしれません。でもこれからは、「アイフレイルが始まってきたかな。もう少し目のことを気にしてみよう」というふうに考え、アイフレイル自己チェックをしたり、眼科で相談したりして、ご自分の目の健康を気にかけてほしいと思います。

 「歳のせい→放置」から「アイフレイル→目のケアが必要」と意識を変えることによって、眼疾患の早期発見・早期治療や、加齢性変化への適切なケアにつながり、それが目の健康寿命の延伸につながるのです。

 まずはアイフレイルチェックリスト=図2=で自己チェックをしてみましょう。二つ以上あてはまる場合は、アイフレイルの可能性がありますので、一度眼科を受診されてはいかがでしょうか。

 加齢とともに増加する眼疾患には、緑内障、白内障、加齢黄斑変性などがあります。いずれも初期には自覚症状がなく、徐々に進行する疾患です。アイフレイルかな、と思った時に眼科検診を受けて早期に発見できれば、適切な予防・治療が可能となります。

 目の健康寿命を延ばすために、ちょっとした目の不調を放置せず、ぜひ目の健康を振り返るきっかけにしてください。

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 倉敷平成病院(086―427―1111)

 いしぐち・なより 筑波大学医学専門学群卒業。筑波大学附属病院、筑波学園病院、国立病院機構霞ヶ浦医療センター等を経て、2012年4月より倉敷平成病院勤務。日本眼科学会専門医、日本眼科手術学会。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年02月06日 更新)

タグ: 倉敷平成病院

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