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香料2種 コロナ感染予防の可能性 川崎医科大教授ら、実用化目指す

山内明教授

 川崎医科大の山内明教授(生化学)らは、新型コロナウイルスの感染予防効果が見込める香料2種を突き止めた。シナモンの葉に含まれ、食品や漢方薬に使われる「シンナミル・アルコール」と、石けんなどに入れるメロンに似た香りの「ヘリオナール」。臨床研究などを進め、安全性などを確認して実用化を目指す。

 コロナウイルスには「スパイクタンパク質」と呼ばれる突起がある。これを喉や鼻などの細胞表面にあるタンパク質(ACE2)に引っかけて体内に侵入。細胞から栄養を奪って増殖し、発熱やせきなどの症状を引き起こす。

 今回の研究は同大の西村泰光准教授(衛生学)らと共同で実施。初期に流行したコロナウイルスと同じ性質を持つスパイクタンパク質と人間の腎臓細胞と同じACE2を混ぜた試験管内に、香料を加え、両者の結合割合を分析した。

 331種の香料を調べたところ、12種に結合を防ぐ効果が認められた。このうち効果が高い8種について、アルファ▽ベータ▽デルタ▽オミクロン(BA・1)―のコロナ変異株を模したスパイクタンパク質で調べた。その結果、7種は香料の濃度が高まるほど結合を防ぐ効果が高いことが分かった。

 サルの腎臓細胞とBA・1を模したスパイクタンパク質による実験では香料8種の濃度を、0・125%▽0・25%▽0・5%―と変えながら実施。シンナミル・アルコールとヘリオナールの2種の効果が最も高く、いずれも濃度が0・5%の場合、約90~80%の割合で両者の結合を防いだという。

 詳しいメカニズムは不明だが、グループは結合部分に香料成分が入り込んだためと推測。山内教授らは「実際のウイルスを使った実験などを進め、有効性をさらに確かめたい。香料は安価で安全性も高い。実用化できればコロナ禍で苦しむ人々の一助になる」と話している。

 研究成果は昨年12月、米学術誌に掲載された。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年02月20日 更新)

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