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(1)日頃から乳房を意識してみましょう!~乳房セルフチェックについて~ 岡山中央病院乳腺外科医師 今田孝子

今田孝子氏

 乳がんは、女性がかかるがんの中では最も多いのですが、自分でも見つけられる疾患です。そこで乳房のセルフチェックについて詳しくお話しします。

 ■観察しよう

 入浴時などに鏡を見て、乳房や乳頭の大きさや形に左右差はないか、皮膚のひきつれ(くぼみ)はないかをチェックします。もともと左右差のある乳房もありますので、普段の状態を知っておくことは大事です。

 「片方だけ大きい?」

 「ひきつれ?」

 そう思ったら触ってみてください。形の変化や皮膚のひきつれは、乳腺の中に生じた腫瘤(しこり)によって起きている可能性があります。奥に硬いしこりがなければ大丈夫です。

 ひきつれを伴う病気にモンドール病があります。上腕や胸部、腹部にすじ状に硬いひきつれが現れ、痛みやつっぱり感を伴います。この場合、治療は不要で1~3カ月でよくなります。

 ■触ってみよう

 乳房の表面を3~4本の指でさするようにして、ひっかかりや硬いしこりはないかチェックします。少し押さえながら、さするイメージです。乳房をもみほぐすようにつまんでみてもいいです。何かに当たったら指でつまんで、くりくりっと触ってみてください。中に硬いものがなければ大丈夫です。

 「しこり?」と思ったとき、反対の乳房の同じ位置を触って同じように触れるなら、しこりではなく乳腺そのものである可能性大です。乳腺は左右対称です。片方だけ、一部だけに硬いものがあったら受診が必要です。

 乳房を強く押さえて肋骨(ろっこつ)をしこりと勘違いする人がいます。乳腺はつまめますが肋骨はつまめません。肋骨は横に長く伸びているので気づけるはずです。

 ■分泌物をチェック

 乳輪から乳頭にかけて絞るようにつまんでください。分泌物があれば(1)片側か両側か、(2)一つの孔(あな)からか複数からか、(3)その色(白、黄、透明、赤茶色、黒など)をチェックします。

 両側性または片側性でも複数の孔からの少量の分泌であれば心配ありません。ホルモンバランスによるもの、いわゆる乳腺症の症状で、特に治療は必要ありません。

 ただし、授乳中でもないのに両側から白や白透明の分泌物が持続的に出る時は、甲状腺や頭部の下垂体の異常の可能性があるので検査が必要です。片側で、一つの孔から透明、赤茶色、黒色の分泌物があれば受診してください。

 ■生活の中で

 「セルフチェックをしなければ…」と思うと負担に感じますが、最近はブレスト・アウェアネスといって乳房を意識する生活習慣が勧められています。入浴時に体を手で洗ったり、ブラをつける時などに注意を払ってみてください。しこりを見つけた時はもう遅い!? と思う方もおられますが、そうでもありません。早期であれば治る可能性が高いので、時々はチェックしてみてください!

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 岡山中央病院(086―252―3221)

 いまだ・たかこ 香川県立高松高校、岡山大学医学部卒。同大学医学部第一外科学教室に入局後、岩国医療センター、三原赤十字病院を経て、2003年より岡山中央病院に勤務。乳腺外科専門医、癌治療認定医、医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年03月06日 更新)

タグ: がん女性岡山中央病院

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