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(4)妊娠中・授乳中も乳房のセルフチェックを!! 岡山中央病院乳腺外科(セントラル・クリニック伊島) 樹下真希医師 

樹下真希氏

 乳がんは30代後半から罹患(りかん)率が高まります。最近は、結婚年齢や出産年齢が上昇傾向にあるため、乳がんに対して治療を行う時期が、妊娠・出産を希望する時期と重なるケースがしばしば見られます。

 妊娠中は、乳がんに対する治療はできないのではないかと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。おなかの赤ちゃんへの影響が少ない時期に、抗がん剤の治療や乳房の手術を受けることが可能です=表1。従って、妊娠中に乳がんが見つかったからと言って、妊娠の継続をあきらめる必要はありません。

 妊娠中や授乳中はホルモンの影響で乳腺が発達するため、しこりを触っても、正常なのか異常なのかご自身では判断が難しいことがあります。授乳の前後で大きさの変わるしこり、つまり授乳前はよく目立ち触れるけれど、授乳後には小さくなって分かりにくくなるしこりは、乳腺そのものと考えてよいでしょう。また、境界がはっきりした楕円(だえん)形のしこりは乳瘤(にゅうりゅう)と言って、母乳のたまりであることがほとんどです。

 乳がんのしこりは痛みがないことの方が多いので、つい受診を先延ばしにしがちです。しかし、そのしこりが乳がんであった場合は、出産が終わるまで、または子供がおっぱいを卒業するまで、と受診を先延ばしにしていると、病状が進行してしまいます。ご自身やご家族が悲しい思いをすることがないように、妊娠中や授乳中でも乳房に気になる症状があれば、ためらわずに病院を受診していただきたいと思います。

 乳がんに対する治療薬には、ホルモン治療薬や抗がん剤があります。乳がんは、早く見つけて治療を行えば、90%以上は治る病気ですが、ホルモン治療薬にしても、抗がん剤にしても、卵巣の機能を抑える作用があります。治療により通常の年齢よりも早く閉経してしまい、子供を望んでいるのに妊娠が難しくなることがあります。

 これから妊娠・出産を希望される方は、乳がんに対する薬物治療を開始する前に卵子凍結することを選択できます。これは保険適用ではありませんが、費用の一部を助成する制度があります=表2。また、乳がんに対する治療薬は、高価なものが増えてきています。高額な治療が必要となる場合は、長期の治療に伴う負担を軽減できる高額療養費制度などの支援制度を利用していただくことができます。

 妊娠中・授乳中でもぜひセルフチェックをして、気になる症状があれば病院を受診してください!!

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 岡山中央病院(086―252―3221)

 じゅげ・まき 大阪府立三国丘高校、京都府立医科大学卒業。済生会京都府病院、社会保険神戸中央病院、岡山大学病院を経て2016年よりセントラル・クリニック伊島に勤務。外科専門医、乳腺認定医、癌治療認定医、医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年04月20日 更新)

タグ: がん女性岡山中央病院

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