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梅雨明け後の心不全や脳卒中注意 1カ月は高リスク 藤本医師ら分析

藤本竜平医師

 岡山大大学院の藤本竜平医師(津山中央病院循環器内科医長)らの研究グループは、厳しさを増している夏の猛暑と高齢者の心血管疾患、脳卒中の発症リスクとの関連を分析し、梅雨明け後1カ月間は発症リスクが高まることを明らかにした。暑さにさらされた1時間後と23時間後に心血管疾患のリスクが上昇することも分かった。

 心血管疾患や脳卒中は、がんに次いで国民の死因の2位。グループによると、地球温暖化が進む中、東アジア特有の雨季後の気温上昇と、発症リスクとの関連性を明らかにした研究はこれまでなかった。「高齢者は梅雨明け後しばらくは外出を控え、水分を適度にとって予防に努めてほしい」と呼びかけている。

 グループは岡山市消防局の協力で、2012~19年の梅雨入りから梅雨明け3カ月後までに救急搬送された65歳以上の心血管疾患(心不全や心筋梗塞、不整脈など)や脳卒中(脳梗塞、脳出血など)の患者6527人のデータを入手。119番入電時の気温との関連性を詳細に分析した。梅雨期間中と比べ、気温が急上昇する梅雨明け後の1カ月間は発症リスクが心血管疾患で34%、脳卒中で35%高く、気温が上昇するほどリスクは高まった。

 梅雨明け後1カ月までの間に心血管疾患で搬送された患者の分析を進めると、暑さにさらされて1時間後に33%、23時間後には40%リスクが上昇していた。

 藤本医師は要因について、「体が暑さに慣れていない中、発汗による脱水や血液の凝固異常などを引き起こしているのでは」と指摘する。高齢者は動脈硬化が進んで血管に粥状(じゅくじょう)の隆起(プラーク)を形成しやすく、脱水により血液が濃縮されたり、プラークが破れることで、血の塊(血栓)ができて脳や心臓の血管がさらに狭くなって詰まることがあるという。

 1日近くたって心血管疾患のリスクが高まったことについては「高齢になると体温調節機能が低下し、症状を自覚しにくく、熱を蓄積しやすかったり就寝中に脱水が進んだりすることが背景にあるのでは」と分析している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年05月07日 更新)

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