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若年層のピル服用 じわり広がる 生理痛、PMS改善へ選択

ピルの服用を希望する患者をタブレット越しで診察する上村院長=ウィメンズクリニック・かみむら

処方されるピルの一部

 おなかが痛い、なんだか気持ちが沈む―。毎月の生理に振り回されている人は少なくないだろう。月経トラブルの改善に向け、県内ではピルの服用が若年層の間でじわりと広まっている。自分の体にまつわる知識を身に付け、不調を我慢せずに症状の軽減が見込める方法として選ばれているようだ。

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 ピルは女性ホルモンの一つ、卵胞ホルモンの含まれる量により、高用量▽中用量▽低用量▽超低用量―に分類。月経痛の緩和などで長期間服用する場合は、主に低用量、超低用量が使われる。飲み始めに一時的な頭痛や吐き気、不正出血といった副作用が起こるケースがある。

 三宅医院(岡山市南区)では2、3年前からピルを処方する患者が増え、10年前の3、4倍に。「腰痛がひどくて仕事を休まざるを得ない」「生理前にイライラして人に当たってしまう」などと訴える20、30代が目立つという。

 中には初診からピルを求める患者がいて、三宅貴仁院長は「メディアを通じて産婦人科医が情報を発信するなどし、若い女性の間で生理の知識が広がったのでは」とみる。

 オンライン診療の規制緩和も要因に挙げられる。ウィメンズクリニック・かみむら(同市北区)は、2015年にタブレット端末などを使って遠隔診療ができるようになった直後、オンライン診療を導入した。婦人科を受診するハードルが下がったことなどから、患者は以前より1割程度増加。今は月1200人ほどにピルを処方する。

 高校生や大学生が多く「口コミで増えている」と上村茂仁院長。いずれも生理不順▽月経痛▽過多月経▽気分の落ち込みや肌荒れなどのPMS(月経前症候群)―といった悩みを抱える。

 片山医院(赤磐市)も夜間に実施。日中に仕事や育児で来院できない20代から好評という。オンライン診療によるピルの処方は個別のクリニックに限らず、全国規模のサービスが多数出ている。片山陽介院長は「重篤な疾患を見逃すリスクが考えられる。入り口として利用するのはいいが、一度は対面での診察を」と呼びかける。

利用者の声


 抑え切れないイライラ消える 

 生理のたびに出血が1カ月以上続いた。貧血になって駅のホームで倒れ救急車で運ばれたこともある。学校の先生に相談したら産婦人科に行くよう言われた。高校1年の夏に受診し初めてピルを飲んだ。今は連続服用して生理の回数を減らし、3カ月に1回のペース。ナプキンを持ち歩かなくて済むし、大好きな温泉にも多く行ける。月経前の抑え切れないイライラも消え、人と接するのが怖くなくなった。=赤磐市、高校3年(17)

 経血量減って腰痛軽くなった

 経血量が多く、吸収量が多い夜用ナプキンを使ってもシーツが汚れた日がある。自宅近くのクリニックにかかり、2年ほど前からピルを飲み始めた。当時は5歳と1歳の娘の面倒を見ながら頻繁にナプキンを取り換えるのが難しかった。今は薄いナプキンで事足りるし、生理中の腰痛も改善された。ただ子連れでの受診は大変で別の婦人科のオンライン診療に切り替えた。ネット予約でき、待ち時間もない。自宅にいながら診てもらえて便利。=早島町、主婦(35)

記者のひとこと


 社会全体で関心を 

 「生活に支障のある生理は悪なんです」。取材では、ある産婦人科医の言葉が印象的でした。経済産業省の調査によると、生理不調による労働損失は年間4911億円とも試算されます。

 生理の悩みは個人差が大きく「これくらいなら」と我慢しがち。つらいときは自分の体をいたわってほしいし、社会全体で女性の体調にもっと関心を持ってほしい―。そんなことを考えながら執筆しました。

 ピル 卵胞ホルモンと黄体ホルモンが配合された錠剤。排卵を抑え子宮内膜を薄く保つ作用があり、経血量や月経痛の軽減につながる。産婦人科などで処方され、避妊目的でも用いられる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年05月14日 更新)

タグ: 女性

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