文字 

(5)乳房以外のしこりにも要注意!!~副乳と男性乳腺の病気~ 岡山中央病院乳腺外科(セントラル・クリニック伊島) 樹下真希医師

樹下真希医師

 ヒトの乳房は通常左右に一つずつです。でも、動物のお母さんにはたくさんおっぱいがありますよね。進化の過程で目立たなくなってしまいましたが、ヒトの体にも、その名残の組織が残っていて本来の場所以外に乳房や乳頭ができることがあります。これを「副乳」と言います。

 副乳は、脇の下から正常乳頭を通り太ももの内側に至る弓なりの線上=図1=に見られますが、脇の下に見られるケースがほとんどです。副乳にも乳腺組織がありますので、女性ホルモンの作用を受けて大きさが変化します。

 また、乳房内の乳腺と同様に、副乳にも良性の腫瘍ができたり、がんが発生したりすることがあります。セルフチェックの際には、左右の乳房だけでなく、脇の上の方まで触ってしこりがないか確かめてみてください。

 乳腺の病気は女性だけのものではありません。男性にも乳輪の下に乳腺組織が存在します。男性の乳腺の病気の中で最も多いのは、女性化乳房症という良性の病態です。片方または両方の乳腺組織が発育して乳房が膨らみ、乳輪の真下に大きくなった乳腺がしばしば痛みを伴うしこりとして触れます。乳児期、思春期、および高齢期に多く見られます。

 原因としては、女性ホルモンの影響による生理的なもの以外に、甲状腺機能亢進(こうしん)症、肝硬変、慢性腎不全などの他の病気に随伴して起こるものと、降圧・利尿薬などの薬剤によるものがあります。

 生理的な要因が原因である場合は、自然に症状が軽快します。薬剤が原因の場合は、可能であれば投与を中止していただきます。痛みがあり、日常生活に支障がある場合は、乳腺を切除することもありますが、このようなケースはまれです。

 また、医療ドラマで取り上げられてご存じの方もいらっしゃると思いますが、男性にも乳がんができることがあります。乳がん患者さんの約150人に1人が男性です。男性乳がんの大半がホルモン感受性で、女性ホルモンの作用を受けて大きくなるタイプです。男性の体の中でも女性ホルモンは作られており、がん細胞はその刺激を受けて成長します。男性乳がんの治療は女性の乳がんと同様で、治療効果も大きな違いはありません。

 男性だから乳がんの心配はないということはありません。男性の乳がんも乳腺外科で治療を行います。また男性乳がんの患者会もあり、NPO法人キャンサーネットジャパンが主催しています=図2。乳房に気になる症状があれば男性でも乳腺外科を受診してください。

     ◇

 岡山中央病院(086―252―3221)。連載は今回で終わりです。

 じゅげ・まき 大阪府立三国丘高校、京都府立医科大学卒業。済生会京都府病院、社会保険神戸中央病院、岡山大学病院を経て2016年よりセントラル・クリニック伊島に勤務。外科専門医、乳腺認定医、癌治療認定医、医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年05月16日 更新)

タグ: がん岡山中央病院

ページトップへ

ページトップへ