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(5)子どもたちの心と体の健やかな成長に寄り添う社会を 笠岡第一病院小児科医長 湯本悠子

湯本悠子氏

 3年ぶりにマスク着用も緩和されて、新緑が目にも口にも、心にもおいしいゴールデンウイークを満喫された方々も多いことでしょう。

 新入学や進級から1カ月経過したこの時期に、子どもたちに「ちょっとお疲れ症状」が現れてくることがあります。以前より「五月病」ともいわれる不定愁訴のなかでも腹痛、頭痛が続く場合は家族の皆さまのご心配も強くなります。

 腹痛は年齢別の好発疾患を想定しながら、問診・診察を行い迅速な検査・処置対応が必要となる腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)、虫垂炎、出血性胃腸炎、消化器潰瘍、腎尿路疾患などの器質的疾患を鑑別します。

 また、繰り返し長引く腹痛の中には機能性腹痛、反復性腹痛、心因性腹痛等も含まれ、家庭環境や生活習慣、家族や友人、学校等の人間関係、子どもの性格、成長発達など広範囲で長期間にわたる対応を要するケースもあります。

 受診時に『発症時期、痛みの部位・持続時間・頻度・曜日や時間帯、食欲、嘔吐(おうと)・下痢・便秘・発熱などの症状の有無、体重減少・頭痛・四肢痛などの合併、生育歴』のメモや下痢便、血便などの持参や便の画像も大きな参考になります。

 コロナ禍以降、小児科外来診療では頭痛・腹痛や、だるい、長時間のゲーム・スマホで朝起きられないなど、学校に行きにくい子どもの受診割合が増加してきています。「しょうがないな、コロナじゃけぇ」と、規制の多い生活や社会不安が長期にわたり、戸外で子どもたちが体を動かしてワクワク・ハラハラ・ドキドキ夢中で遊ぶ体験や、困ったことつらいことも含めて言葉で表現し、話し合い解決する経験等、成長発達に欠かせない大切な時間が削られてきたように思います。これらの経験はいずれも周囲の大人の温かいまなざしとゆとりある対応の環境の中で育まれます。

 子どもの心と体の健やかな成長を願い地域の子どもや保護者の皆さま、日頃子どもたちに接する保育士や先生方に向けて、アレルギー、貧血、感染症などの疾患に加えて、食育・生活リズム(食・遊び・睡眠)、事故防止などの健康教室や出前講座を15年前より行っています。活動を通じて、子どもたちが「自身の身体と心に興味を持ち、自分の健康を自分で守る人」に成長されるよう願いを込めて、スタッフ一同協力して取り組んでいます。

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 笠岡第一病院(0865―67―0211)

 ゆもと・ゆうこ 香川医科大学卒業。国立病院機構岡山医療センター、岡山大学病院を経て2018年4月笠岡第一病院小児科医長。日本小児科学会小児科専門医・指導医、子どもの心相談医、地域総合小児医療認定医、ICD、新生児蘇生法インストラクター。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年05月16日 更新)

タグ: 子供笠岡第一病院

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