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(5)大腸がんにならないために 岡山済生会総合病院診療部長(内科) 原田馨太

600平方メートルを超えるフロアに7列の個室化された内視鏡ブースを有する岡山済生会総合病院内視鏡センター

原田馨太氏

 ■大腸がんの成り立ち

 大腸がんのほとんどは良性の大腸ポリープが発生源です。大腸ポリープの約10%が大きくなり、発がんし、進行がんに成長していくという過程をとります。従って、発がんする前に大腸ポリープを内視鏡で摘んでしまえば、大腸がんになったり、大腸がんで亡くなったりする患者さんの数を大きく減らすことができる、ということが幾多の大規模な臨床研究で証明されています。

 10%が発がんするということは、裏を返せば、残り90%に入れば放っておいても構わないともいえます。しかし今の医療技術をもってしても、良性の段階で、そのポリープががんに進むのか進まないのかを完全に言い当てることはできません。そのため大腸ポリープがある程度大きくなったら、その時点では良性でも内視鏡で切除することをお勧めしています。

 ■食生活の欧米化と大腸がん

 大腸がんにかかる人は、赤身肉や加工肉を好んで食べる人や、肥満の人が多いというのは昔から知られており、わが国で大腸がんの患者さんが増えたのは食生活が欧米化したからだとよくいわれます。それなら欧米的食生活の本場米国ではさぞかし大腸がんの罹患数(りかんすう)がうなぎのぼりなのだろうと思いきや、1985年を境に35年間をかけてほぼ半減しています。最近の統計では人口1・2億人のわが国と、3・3億人の米国とで、大腸がん罹患数(約15万人)、大腸がんによる死亡者数(約5万人)とも、ほぼ同数か日本のほうがやや多いという結果でした。

 ■大腸がんにならないためにやっておくべきこと

 米国で大腸がんを減らす立役者となったのは無症状者に対する大腸内視鏡検診です。

 大腸がんは世界共通で50歳以降に急増するため、米国では平均的リスクの成人には50歳を超えたら一度は大腸内視鏡による検診を受けるように強く勧めており、特にオバマケアではこれを保険で100%カバーするよう義務付けました。

 欧米的食生活の本場米国では大腸がんを減らすことが国家的事業となっており、症状のないうちに内視鏡をして、がんになる前のポリープを切除して、大腸がんにならない、という流れが確立してこの対策が成功しているのだといえます。

 一方、わが国における大腸がん検診は、内視鏡よりずいぶんとハードルが低い「検便」で行われているのにもかかわらず、受検率は半分程度、さらに検診に引っかかったのに2次検査の内視鏡を受けてくれない人が4割近くいるという現状があります。

 大腸がんで症状が出たら、それはほぼ100%進行がんです。上記の15万人の大腸がん患者さんの中には「症状がないから」と言い訳しながら、受けるべき内視鏡検査を先延ばししてしまったことを後悔している方がたくさんおられます。

 岡山済生会総合病院の内視鏡センターでは、コロナ禍にあっても年間1・3万件(うち大腸は4千弱)にのぼる検査を行ってまいりました。非常勤医師を含め総勢15人の消化器内視鏡学会専門医が、検診から診断、治療、治療後のフォローアップまで幅広く対応しています。「あの時しておけばよかった…」と後悔することがないよう、お気軽にご相談ください。

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 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

 はらだ・けいた 岡山操山高校、岡山大学医学部卒業、岡山大学大学院医学研究科修了、医学博士。津山中央病院、福山市民病院、岡山大学学術研究院医歯薬学域講師などを経て2022年より現職。日本消化器病学会専門医指導医、日本消化器内視鏡学会専門医指導医など。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年05月16日 更新)

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