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(14)息づかい 倉敷中央病院小児科医長 林知宏
はやし・ともひろ 広島城北高、広島大医学部卒。広島大学医学部付属病院、広島市立安佐市民病院、三次中央病院、あかね会土谷総合病院を経て2008年から倉敷中央病院小児科。12年4月から現職。日本小児科学会専門医。
こどもの『息づかい』
こどもは、気管が細く胸の筋肉(呼吸筋)はあまり発達していないために、1回に呼吸する空気の量が少ないので、おとなに比べて呼吸数が多いです。おとなは1分間に15回ですが、生後1カ月までの赤ちゃんは40回、1歳までの乳児は30回、2〜5歳は25回、5〜10歳は20回程度です。また、生後3カ月頃までは鼻呼吸(はなこきゅう)が主で、口呼吸(くちこきゅう)は上手ではありません。
こどもの呼吸困難
こどもでは、かぜ(風邪)・気管支炎・肺炎・ぜんそくなどの呼吸器系の病気が多くみられます。悪くなってくると、鼻・のど・気管などの空気の通り道が狭くなり、息が苦しくなります。でも、こどもたちは息が苦しくなっても上手に表現できません。どうやって「息が苦しい」のを見極めたらよいのでしょうか? それは…
(1)息がはやい(多呼吸)
(2)肩を上下させている(肩呼吸)
(3)首の付け根やわき腹が息をするたびにぺこぺこへこむ(陥没呼吸)
(4)横になれない(起坐(きざ)呼吸)
(5)小鼻がぴくぴくしている(鼻翼呼吸)
このような「息づかい」のときは、息が苦しいんですよ。森のおかあさん、おとうさんたち、こどもの「息づかい」に気を付けてくださいね。
『息づかい』がしんどくなる病気
(1)気管支炎・肺炎
ウイルスや細菌などが原因となります。特に冬に流行するRSウイルスは要注意です。
鼻汁や咳(せき)などの“かぜ”症状で始まります。新生児や乳児では気管や肺に炎症をおこすと、気管がはれて、たんが多くなり、空気の通り道が狭くなりやすいです。息を吐くときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」(喘鳴(ぜんめい))という音が聞こえます。こどもたちは息苦しくなります。飲めなくなったり、眠れなくなることもあります。生まれて半年を過ぎて少し呼吸が上手になってきた頃からは、しょっちゅうかぜをひきますね。透明な鼻汁から始まるのはほとんどウイルスが原因ですが、インフルエンザや水ぼうそう以外にはウイルスに効く薬はありません。本人の治ろうとする力が活発になるまで(4〜5日くらい)は悪化することがある時期なので、よく観察してくださいね。熱だけで元気なときにはあわてなくてもよいですが、熱がなくても息づかいがおかしいときには酸素吸入などの治療が必要なことがあります。
(2)気管支ぜんそく
慢性的に気管に炎症がおこっていて、気管が過敏になっています。室内のほこりやダニのアレルギーが原因のことが多いです。発作的に気管が縮んで狭くなり、喘鳴や呼吸困難が出ます。
(3)仮性クループ
かぜのウイルスがのどを狭くして、息を吸うときに喘鳴が出たり、声がれやオットセイのような咳をするのが特徴です。ひどく狭くなると息苦しくなります。
(4)気道異物
ピーナッツなどの小さなものが気管に入りこんでしまい、突然に咳き込んだり、喘鳴、呼吸困難が出てきます。
(5)心臓病
心臓の病気で血液の流れに異常がある場合にも、多呼吸・陥没呼吸など、「息づかい」が悪いことがあります。体重増加不良を伴うことがあります。
『息づかい』がしんどいときには…
森での外遊びはひとまずお休みです。おうちでしっかり安静にしましょう。たんが出やすくなるように、水分をしっかり補給しましょう。満腹になるとおなかが張って、胸を圧迫して、息苦しくなることがあります。少なめで、回数を増やして与えましょう。眠るときは、体を少し起こしてみましょう。赤ちゃんでは抱っこしてみてください。お部屋の加湿をしたり、鼻汁が多ければ授乳前には鼻を吸ってみてください。それでも楽にならないときやひどく苦しいときは、早めにお医者さんを訪ねてくださいね。また、唇や顔の色が悪いときは体の中の酸素が足りない状態です。急いで病院を受診してください。
さあ、こどもの「息づかい」がわかりましたか? 今日、寝ているときに、こどもの寝顔といっしょに「息づかい」もみてくださいね。今回は、これでおしまいです。
(2013年01月07日 更新)