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(下)中学生から避妊知識を ウィメンズクリニック・かみむら院長 上村茂仁

 いきなりですが、精通があった男性と月経が始まった女性であれば、たとえ小学生であっても子どもをつくることも、産むことも可能です。若者が性行為を行っていいかどうかは別として、親はそのことをしっかり意識しないといけません。

 ところで文部科学省の学習指導要領によれば、中学生に対しては学校では避妊について教えてはいけないことになっています。義務教育で教えなければどうするのだ、という疑問は残りますが、そうなると家庭での教育しかありません。

 避妊法に関して言えば、コンドーム、ピル、女性手術(卵管結紮(けっさつ)術)、男性手術(精管結紮術)、子宮内避妊装具(IUD、IUS)などがあります。膣(ちつ)外射精やオギノ式などを一般に避妊法と考えている人もいますが、避妊率はとても低く、実際に使えるレベルではありません。

 別表に避妊の失敗率を示します。これを見れば分かりますが、確実に使用したとして妊娠率が1%以下なのは、手術による方法とピル(OC)だけです。ただし未婚または子どもを産んでいない女性や男性が手術を受けるはずもなく、一般に高い確率で避妊できる方法はOCだけということになります。日本での治療研究では、OCの避妊率は99%以上となっています。

 日本ではコンドームを使用することが多いのですが、ご覧のようにコンドームは理想的な使い方でも年間2%、普通に使えば15%は妊娠します。避妊具としては効果的ではないといえます。ちなみに膣外射精だと妊娠率は20%に上ります。

 世界におけるOC普及率と人工妊娠中絶率はグラフ1の通りです。ドイツではOCは60%近い普及率です。フランスでも35%、アメリカは15%、そしてこの普及率と逆比例で人工妊娠中絶率は増加しています。

 さて日本の普及率はというと4〜5%くらいで、とても先進国の仲間入りとはいえません。避妊にはOCということを徹底して教える必要があります。現在、ほとんどの産婦人科でOCは処方されます。もちろん、未成年でももらえます。女性はOCを飲んで彼はコンドームを使用する、これのみが確実な避妊法といえます。

 このようにOCとコンドームの併用で避妊ができるわけですが、いまだにコンドームのみで避妊をしている人たちも少なくはありません。コンドームを使用する場合、どうしても脱落や破損が起きます。さらに前述したように、確実な装着であっても年間2%は妊娠します。またあってはいけないことですが、レイプ被害や性被害もないとはいえません。

 私のメール(kamimura@kitty.jp)に寄せられた性被害の現状はグラフ2の通りです。携帯電話を持つことのできない小さい子からは連絡が来ていません。子どもたちに緊急避妊法を教えることは自分を守るためであると同時に、友人が被害に遭った時に助けてあげることにもつながります。

 緊急避妊薬は日本では1種類のみが認可されています。レボノルゲストレル錠で、性行為があってから72時間以内に内服します。この薬は排卵を遅らせたり、子宮内膜の性状を変化させたり、精子の運動率を下げたりすることで避妊効果を発揮します。妊娠阻止率は85%以上です。

 産婦人科で1万〜2万円の間で処方されていますが、レイプなどの場合は警察に届けを出せば、警察が緊急避妊薬の支払いをしてくれる仕組みもできています。ただしこの薬はあくまでも緊急的に使用するものであって、コンドームやOCのように、計画的に妊娠を回避するためのものでないことに十分留意しておくことが大切です。

 確実な避妊が、望まれない妊娠や児童虐待の防止につながります。中学生の間にきちんとした避妊知識を教える、これは子どもを守るためにはとても大事なことなのです。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年05月06日 更新)

タグ: お産

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