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公立校で重度食物アレルギー急増 県教委調査、3年前の5倍超に

自己注射薬の打ち方の練習をする教諭ら=浅口市・六条院小

岡山大病院臨床栄養部の坂本八千代副部長

 食べ物などが原因で生命の危険を伴う重度のアレルギー症状「アナフィラキシーショック」の恐れがある児童生徒が、岡山県内の公立小中高校で少なくとも182人に上ることが県教委の2013年度調査で分かった。調査を始めた10年度(35人)の5・2倍に急増。県教委は各学校に対応の徹底を通知してマニュアル作成を呼び掛け、各学校と給食調理場は対策強化を図っている。

■県教委

 アナフィラキシーは急激な血圧低下や呼吸困難に陥ることがあり、懸念される人には医師が発症時に太ももなどに打つ自己注射薬を処方する。

 今年2月の調査では、自己注射薬が処方されている児童生徒は小学生101人、中学生54人、高校生26人、特別支援学校生1人。実際に使用したケースは県北で昨秋に1件あったが、重篤な症状には至らなかった。

 結果を踏まえ、県教委は全教職員の共通理解を図るよう各小中高校に通知文を送付。対応マニュアルを作っている学校は半数程度にとどまっているとみられるとして、各市町村教委や学校単位での作成を求めている。

■学校

 教職員が注射しても医師法に違反しないと国が判断しており、各学校は県教委などが貸し出している自己注射薬練習キットを使った校内研修をしている。12年に東京で給食を食べた女児が死亡する事故が起きて以降、研修が増えている。

 浅口市立六条院小学校(同市鴨方町六条院中)では、13年度から全教職員を対象に打ち方を練習。6月の研修会では救急救命士らを指導者に招いた。児童が嫌がって暴れる可能性があるため、足や手を押さえる人と打つ人に分かれる役割分担をはじめ、症状が出たらためらわずに必ず打つとともに救急車を呼ぶことを確認した。

 佐藤尊保教頭は「養護教諭や担任だけでなく、誰でもすぐに対応できるよう実践練習を続けたい」と話した。

 同小は給食への対応が必要な児童について、保護者や調理職員と注意点などを話し合い、情報を共有。周囲の児童へも担任らがアレルギー症状のあることを伝え、本人が安心できる環境づくりに努めているという。

■給食調理場

 県教委の調査によると、12年度に給食に配慮が必要な児童生徒は3142人。初調査の08年度(2046人)から千人以上増えており、給食調理場も対応に追われている。

 給食から原因食材を抜く「除去食」▽食べられるもののみ出す「一部提供」▽パンをご飯に代えるなどの「代替食」▽代替品を持参してもらう―といった措置をとっている。

 高梁学校給食センター(高梁市落合町阿部)では、約1750人のうち65人に対応している。保護者、教員らと面談して献立の個別表を作成。専用室で調理して原因食材の混入を防ぎ、容器に専用カードを張って学校へ送る。

 原因食材を単に避けるだけではない。カレールーが使えない場合、ルーを抜くだけでなく、味を濃くしてとろみをつけ、ほかの子どもと同様にご飯にかけて食べられるようにする。徳田勤固所長は「給食は『食』を学ぶ場なので、なるべくみんなと同じように、おいしく楽しく食べてもらえるよう知恵を絞りたい」としている。

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「食材管理、情報の共有重要」 岡山大病院臨床栄養部の坂本副部長に聞く 

 教職員、調理場職員、保護者それぞれの立場でできるアナフィラキシーに対する備えについて、管理栄養士で、岡山大病院臨床栄養部副部長の坂本八千代さんに聞いた。

 調理場では、食材の混入防止はもちろん、フライパンやさいばしといった調理器具も各アレルギー専用のものを置いて別々に保管する必要がある。洗剤で洗った程度では除去しきれないこともある。少しでも危ういと思う食材は避け、レシピが狭められても安全なものしか使わないようにすべきだ。

 学校現場では自己注射薬の使用方法の研修を定期的に行い、いざというときにはためらわず使わなければならない。どの子どもが所持し、かばんのどこに入れているかという情報の共有が全教職員でいる。

 軽度のアレルギーがあると分かっていても、食べさせている保護者も見受けられる。症状が悪化することもあるので受診は必要。原因食材を除去することで栄養失調になって成長を妨げるケースもあり、適切な指示を受けることが大切になる。保護者は医療関係者から得た情報を学校と調理場に正確に伝えるよう徹底してほしい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年09月23日 更新)

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