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骨粗鬆症の話(1)どんな病気? 倉敷中央病院副院長・整形外科主任部長 松下睦

まつした・むつみ 滋賀県立膳所高、京都大医学部卒、同大大学院博士課程修了。岐阜市民病院整形外科、日赤和歌山医療センター整形外科部長、京都大医学部助教授など経て2002年から倉敷中央病院整形外科主任部長、09年副院長(同部長兼務)。

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骨粗鬆症の話(1)どんな病気?

 骨粗鬆(そしょう)症の「粗鬆」とは内部に隙間が出来てスカスカになるという意味で(図1)、その結果骨の強度が落ちて骨折しやすくなる病気が骨粗鬆症です。事故など大きな外力で骨が折れる通常の骨折と区別するために、骨が弱くて転んだだけで折れたものを脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折と呼びます。

【1】どんな人が骨折しやすいでしょう? 

 年齢を重ねると骨の強度は低下し、女性は男性より、またやせた人は太った人より骨折しやすい傾向があります。親が骨折しやすいと子どもも骨折しやすく、遺伝することが知られています。病気や薬など他の原因でも骨が弱くなります。例えば関節リウマチなどで使われるステロイドホルモン剤の副作用で骨折が生じます。

 最近では糖尿病、腎臓病などの内科の病気でも骨折が増えることがわかってきました。つまり(1)高齢(2)女性(3)やせ型(4)親の骨折―が主な危険因子で、それに他の原因が加わるとさらに危険性が増します。高齢化の進行が早いわが国では、骨粗鬆症の患者数は、潜在患者を含め1300万人といわれています。

【2】どんな症状?

 骨粗鬆症の人が骨折をすると突然の激痛で動けなくなりますが、骨折さえしなければ骨粗鬆症は無症状です。ただ、骨が弱いために徐々に背骨が短くなり、背中が丸くなってきます。若いころに比べて4センチ以上身長が低下したり、背中が丸くなってきたら骨粗鬆症の可能性があります。

【3】骨粗鬆症は怖い病気?

 高齢の方は骨折の後、がんばってリハビリをしても立つ、歩くといった運動能力が完全には元に戻りません。さらに悪いことに一度骨折をすると次は4倍骨折しやすくなるといわれており、骨折の連鎖反応を引き起こし、行きつく先が寝たきり、介護ということになりがちです。特に骨粗鬆症の多い女性では要介護の原因は脳卒中、衰弱に続いて骨折が第3位です(図2)。さらに意外なことに、骨粗鬆症では死亡率は約2倍と寿命が短くなることまで分かっています。

【4】治療法はありますか?

 以前は老化現象だから治らないと思われていた骨粗鬆症も20年くらい前に有効な薬が発売され、薬を続けると丈夫な骨になり、その結果骨折が減り、寿命が延びることが証明されています。その後、たくさんの薬が開発され、まだ骨折を起こしていない軽い患者さんから骨折を繰り返す重症の患者さんまで対応できるようになりました。食事や運動など生活の注意だけではなく、薬による治療が大切です。

 特に一度でも骨折をした人は必ず薬を飲むように勧められていますが、実際日本では骨折の後で薬を続けている人はわずか2割です。骨折が治ると痛みがなくなり、“喉もと過ぎれば熱さ忘れる”で薬をやめてしまう人が多いと思われます。そのような人には、再骨折、さらに骨折連鎖の危機がひそかに忍び寄ってくるのです。薬は整形外科でも出ますが、最近はかかりつけの内科の先生で出していただけるところが増えています。「骨折」で思い当たる人は、ぜひご相談ください。



 倉敷中央病院((電)086―422―0210)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年04月06日 更新)

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