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運動療法とは?

主任理学療法士
萬田 修久

<運動療法とは?>
 その言葉の通り、運動を治療手段とした医療技術です。一般的には骨折や脳卒中患者に対する運動療法の印象が強いと思いますが、私が担当する循環器疾患や呼吸器疾患といった内部障害に対しても広く適用されています。両疾患に共通する運動療法の誇るべき点は、その効果が高いエビデンスとして国際的に証明されていることです。今回は心筋梗塞患者に対する運動療法について、簡単に紹介致します。

<生活習慣の是正が重要>
 心筋梗塞は糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病が基に発症します。つまり心筋梗塞の発症・再発を予防するには、生活習慣の改善が重要であることは誰もが理解出来る事でしょう。厚生労働省は生活習慣改善に必要な条件として、「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後に薬」の4つを挙げています。疾患の治療時期によっては4つの順番が入れ替わることがありますが、運動が重要な治療手段であることは間違いありません。

<運動の進め方>
 運動の効果を得るためには、一定の条件を守る必要性があります。がむしゃらに、行け行けドンドンで頑張ればいい訳ではありません。運動の効果には筋力増強、筋持久力増強、柔軟性の改善等があり、心筋梗塞においては筋持久力の改善を目標として設定します。効果的な運動を進めるための条件は以下の通り。1.種類:有酸素運動、2.運動時間:1日30分以上、1週間で150分以上、3.運動頻度:週3回以上(習慣化するには毎日が望ましい)、4.運動強度:うっすらと汗をかく程度、少し疲れたかなあと感じる程度の強度です。運動の効果が定着するには、2~3カ月の期間を要します。焦らずに、慌てずに気長に取り組んでみましょう。

<いつでもどこでも、テレビを見ながらも>
 有酸素運動と聞くと、直感的に歩行練習と考える方はきっと多いはずです。確かに歩行練習は持久力改善につながる運動なので、私も臨床において指導しています。ただし注意すべき点は、歩行練習はそれ相当の条件が整っていないと実施出来ません。例えば暑い夏の日に、雨の日に、風の強い日に外を歩きますか?インフルエンザが流行している時期に外を歩きますか?先にも言いましたが、心筋梗塞は生活習慣の乱れが基に発症する病気です。生活習慣の改善には日々の努力と継続が必要であり、運動もいかなる状況であっても実施可能な内容でなければなりません。では私が患者様に対して実際に指導している運動を紹介します。入院患者様の多くは夕方4時から放映される、ヒゲじいさんの全国行脚物語をよく見ています。この時間を運動の時間として有効に利用してもらいます。まずは番組を見る時はベッドに寝転ぶのではなく、座って見ましょう。またコマーシャルの時間は立ちましょう。体力の余裕があれば足踏みをしましょうと指導しています。ある日に放映されたこの番組を解剖してみると、55分間の放映時間中にコマーシャルが約9分間ありました。この原稿を見ている皆さん、実際に9分間足踏みをしてみて下さい。2分程度で体中が熱くなり、両足に疲労感を生じるのが分かりますよ。また正常の歩行速度(時速3~4k/h)で9分間歩いたならば、どの程度の距離に相当すると思いますか?計算上では約450~600m歩いたことになります。具体的には岡山ろうさい病院の正面言玄関からレンタルCDがある大きな本屋までが約440m、特別養護老人ホーム〇〇苑までが530mあります。テレビを見ながら結構歩くことが出来るんです。

<ちょっとついでの話>
 最近知ったのですが、テレビで見ることが出来る「ラジオ体操」。あの体操って真面目にやったら、時速6km/h前後で歩いた際のエネルギー消費量に相当するそうです、すごいですねえ。ちなみに私の好きなももいろクローバーZの「Chai Maxx」。この曲のエネルギー消費量もすごいだろうなと感じています。実際にこの曲のダンスとコールをやってみて下さいよ、本当に疲れますよ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年10月22日 更新)

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