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市民公開講座「たばこと病気」



むかし潰瘍、いまはがん-喫煙と胃の関係-
診療部長(外科) 高畑 隆臣


 たばこといえば、昔は胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因と言われ、喫煙量が増えれば増えるほどそのリスクは高まっていました。しかし今は胃がんの発がんリスクを高めていることがわかりました。

 その理由は三つあります。一つ目は、たばこには多くの発がん物質が含まれていることです。二つ目は、ここ十数年胃がんの発がん原因といわれているピロリ菌の胃内での繁殖を手助けしていることです。もともとたばこには胃の粘膜を荒らす作用があり、ピロリ菌はそのような環境でとても繁殖しやすいです。三つ目は、喫煙中のピロリ菌の除菌治療は失敗しやすいことです。喫煙はピロリ菌が繁殖しやすい環境を提供し続けることと同じなので、いくら有効な薬を使ってもその除菌効果が半減してしまいます。

 最新の研究で、たとえピロリ菌が胃内にいても胃がんの発がんリスクが禁煙や塩分摂取制限をすることで下がっているのではないかとの発表がありました。ピロリ菌除菌治療以上に、これらの生活習慣を改善することの方が大切なのかもしれません。禁煙して胃がんの発がん予防に取り組んでいきましょう。

たばこと泌尿器がん
統括部長(外科) 赤在 義浩


 たばこと泌尿器がんは一見関係がないように思われます。たばこの煙の中には無数の発がん物質があり、肺や唾液から吸収され体をくまなく回り、濃縮されて尿として排出されます。結果として尿の通り道にがんができやすくなるのです。

 尿の通り道にできるがんを尿路上皮がんと言います。尿路上皮がんの中には、腎盂がん・尿管がん・膀胱がんがあります。このがんの中で最も多いのは膀胱がんです。もちろんたばこが最も重要な原因なのですが、喫煙者は非喫煙者に比べ4倍膀胱がんになりやすいことがわかっています。

 膀胱がんの特徴は、50歳以上の男性で喫煙者に多いことです。約8割が血尿で発見されます。早期の膀胱がんは、尿道から内視鏡を入れて腫瘍を切除します。手術時間は比較的短く、身体への負担は少ないです。しかし、再発が多く認められるので定期検診が必要です。進行すると、膀胱全摘術が必要となります。

 泌尿器がんはたばこと関係する数多いがんの中の1つです。予防には禁煙が大切です。たばこの煙を吸わないこと吸わせないことが重要です。泌尿器がんの症状は血尿ですが、膀胱炎や内服薬の影響によることもあります。必ずしもがんではないので、怖がらすに早めに受診をしましょう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年01月12日 更新)

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