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(10)放射線科の役割と中四国初の陽子線治療導入 津山中央病院主任部長兼画像センター長(放射線科) 藤島護

従来のX線治療と陽子線治療の比較図

PETの肺がんの画像

PET/CTの肺がんの画像

今春開設予定の岡山大学・津山中央病院共同運用がん陽子線治療センター

藤島護主任部長兼画像センター長

 当院は岡山県北の基幹病院として、さまざまな疾患の異常を描出できる放射線医療機器を備えております。主に高性能のCTやMRI、さらに県下でも3番目に導入したPET―CTなどを使って、核医学検査(シンチグラム検査)、マンモグラフィー検査、胸部レントゲン画像検査など、年間4万件以上の画像検査・診断を行っています。

 また、検診についても人間ドックの標準コースに加え、PET検診、脳ドック、ピロリ検診、胃がんABC検診、その他各種検診(子宮がん検診、乳がん検診、腹部エコー検査、各種腫瘍マーカー検査など)に対応しており、放射線科ではこれら画像の大部分を診断しております。

 一方、放射線科では前述の画像診断の他に放射線治療も行っています。治療実績は2014年が199件(照射回数4095回)、15年はさらに増加傾向にあります。原発巣別では、肺がんと乳がんの二つの疾患で約3分の2を占めています。

 肺がんは男性の10人に1人、女性では21人に1人が発症する疾患で、しかも男性では約60%、女性は約44%が死亡しています。特に肺がんは早期発見が重要で、毎年胸部レントゲン検診をお勧めします。リンパ節転移のない早期の非小細胞肺がんに対する治療の第一の選択肢は手術ですが、現在では「定位照射」という手術に匹敵する治療成績が得られる放射線治療もあります。16年中には当院でもこの治療が可能となる予定です。

 乳がんは女性の12人に1人が発症する疾患で、元プロレスラーの乳がんの公表もあってマンモグラフィー検査の件数は増加傾向です。乳がんは早期発見できれば当院でも対応可能な乳房温存療法(乳房温存手術+放射線治療)でほぼ完治できますので、乳がん検診を積極的に受診していただきたいと思います。

 高度先進医療という面では、津山中央病院では今春、中四国初、また総合病院としても西日本で最初の陽子線治療施設が稼働予定です。既に1月4日より当院と岡山大学病院で陽子線治療外来も始まっています。陽子線治療の対象としては、まず前立腺がんと肝臓がんの患者さんから始め、順次肺がん、頭頚部のがん、骨軟部腫瘍や小児のがんまで拡大していく予定です。特に膵(すい)がんや食道がんといった手術での侵襲が大きいがんにも対応していきたいと考えています。当施設は中四国初ということもあり、この地域でがんと戦っている患者さんにとって、少しでも手助けができればと思います。

 ここで陽子線治療について少しだけ説明させていただきます。がんに対する治療法は大きく分けて「外科的切除」、「化学療法」、陽子線治療が属する「放射線治療」の三つがありますが、がんの種類やステージ(病期の進行度)によってはこれらの治療法を単独あるいは組み合わせて(集学的治療)、最も適した治療法が選択されます。その中で陽子線治療は、人体の深部にあるがんの形状に合わせて放射線量の最大値を集中させ、ピンポイントでがん細胞を死滅させる先端医療です。病変より深い部分にはまったく照射されないため、従来のエックス線治療に比べ正常な細胞への影響があまりなく、副作用の少ない治療として注目されております。

 さらに当院は地域がん診療連携拠点病院として、がん以外の基礎疾患をお持ちの方でも入院の上、他の疾患の同時管理をしながら陽子線治療を受けることができます。またさまざまな合併症をお持ちの高齢者の方でも、今までであれば根治ができなかった比較的大きながんに対しても、陽子線治療は切らずに治すことができる可能性を持った治療です。

 津山中央病院の放射線科は他の診療科と協力し、これからも高度な医療の提供を通じて地域の方々に寄り添い、命や生活を守るため日々精進していきます。

 なお、人間ドック等の検診については津山中央健康管理センター(0868-21-8333)へお尋ねください。



 津山中央病院(0868-21-8111)

 ふじしま・まもる 津山高、岡山大医学部卒。岡山大病院、国立療養所山陽荘病院(現独立行政法人国立病院機構山口宇部医療センター)、おおもと病院、国立岩国病院(現独立行政法人国立病院機構岩国医療センター)などを経て、1993年から津山中央病院勤務。医学博士。日本医学放射線学会診断専門医、日本核医学会PET核医学認定医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年01月18日 更新)

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