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どこまで遺伝子に支配される? 岡山済生会総合病院院長 山本和秀

 1953年にワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を明らかにして以降、遺伝子の研究は急速に進み、2001年にはヒトゲノムプロジェクトによりヒトの全遺伝子が解読されました。

 遺伝子研究の進歩により、がんを始め多くの病気が遺伝子の異常によって引き起こされることが明らかにされました。また遺伝子を調べることにより、ある病気になりやすい体質であるかどうかも推定できるようになってきました。アンジェリーナ・ジョリーが乳がんの予防のために発症前に手術をしたというニュースは驚きをもって伝えられました。今後さらにヒトの遺伝子が簡単に調べられるようになり、病気の予防や早期発見に役立つ時代がくると予想されます。

 リチャード・ドーキンスは「利己的遺伝子」という書の中で、「世代を超えて生き続けていくのは遺伝子であって、個人や個体はその遺伝子の乗りもの(vehicle)にすぎない」とまで言っています。この考え方では、個体が生存し繁殖することで遺伝子は自分のコピーを残すことができ、遺伝子が個体の行動を規定するとしています。この考え方は遺伝子の働きについて極端な意見ですが、個体の肉体が滅びても子孫に遺伝子が伝わる点では一理あると思われます。

 遺伝子の研究は今後ますます進んでいくと思われますが、どこまで遺伝子で説明できるのでしょうか? 私たちの「精神」や「こころ」のような神経の働きまで遺伝子で説明できるのでしょうか? 一卵性双生児は同じ遺伝子を持っていますが、育つ環境によって異なる個性を持つようになります。

 すべてが生まれつきの遺伝子で支配されるのではなく、環境や経験から形成され、成長できる要素があると信じたいと思います。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年03月10日 更新)

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