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市民公開講座「切らずに治す がん陽子線治療」 最新のがん治療 -陽子線治療-

津山中央病院 藤木茂篤院長

岡山大大学院医歯薬学総合研究科陽子線治療学講座 勝井邦彰准教授

パネルディスカッション
診療や臨床試験で協力 勝井/一番大切なのは早期発見 藤木

 パネルディスカッションでは津山中央病院の藤木茂篤院長と岡山大大学院医歯薬学総合研究科陽子線治療学講座の勝井邦彰准教授が座長を務め、聴講者から事前に寄せられた180以上の質問の中から特徴的なものに、講演した4人が答えた。(文中敬称略)

 藤木 がん治療に、なぜ陽子線治療を選んだのか。

 小積 治療に痛みがなく、後遺症や副作用もほとんどないと聞いたからだ。私はたまたま受けたPSA検査でがんが見つかった。定期的な健康診断の大切さを痛感している。陽子線治療で治した私は、現在はがんになる前と変わらない日常生活が送れている。

 藤木 放射線治療で特に気を付けていることは。

 高原 一番大切なのは安全に、少しでも苦痛が少なく治療を受けてもらうこと。陽子線治療でも避けられない有害事象はあるはず。ある程度の予測はできるが、ケアが後手に回らないように日々の観察を大切にしている。

 藤木 患者さんの家族へのアドバイスを。

 高原 患者さんは長い治療を休まず受けることが大事。家族は心身両面で患者サポートを。一方で家族が抱える不安もあると思う。気軽に私たち医療従事者に相談してほしい。

 藤木 医療従事者と患者さん、その家族が一致団結して治療に取り組むことが重要だ。

 勝井 陽子線治療の適用に年齢制限はあるか。またがんの進行度は陽子線治療に影響するか。

 沖本 陽子線治療に年齢制限はない。進行度は非常に重要な要素だ。体中にがんが転移した状態のステージ4には手が出せない。逆にステージ1の小さな腫瘍が1カ所だけにあるという場合は非常に適している。

 勝井 陽子線と重粒子線の違いは。

 沖本 細胞実験では重粒子線の方が細胞を破壊する力が2~3倍高い。しかしそのまま使うと副作用も強くなると考えられ、治療では陽子線と同等のパワーで使用。臨床成績も似ているが、違いについては今後も研究していく。

 勝井 再発したがんに対する陽子線治療の役割は。

  例えば、以前手術した場所から再発したが転移がない場合、陽子線治療は適用になり得る。

 勝井 陽子線治療の費用は。

  陽子線の照射技術料が288万3千円で、さらに検査料、診察料、入院費などで別途50~100万円が必要。この全てを健康保険でカバーできるのは、小児がんと骨軟部のがん(重粒子線治療)だけだ。それ以外のがんでは、先進医療として検査料や診察料などは健康保険でカバーされるが、照射技術料は全額が患者さんの負担になる。高額療養費制度を使えば、先進医療での陽子線治療費は総額300~310万円くらいになるだろう。ただ民間のがん保険に先進医療特約を付ければ、照射技術料の負担も軽減される。

 勝井 健康保険適用は広がるか。

 沖本 健康保険適用になるには四つのハードルがある。安全性と有効性、普及性、費用対効果だ。判断材料として特に重視されるのが臨床試験。さまざまながんで臨床試験が実施されていたり、実施される予定がある。有効性が証明され、保険適用が広がることを期待している。

 勝井 岡山大学は適応の判断や経過観察などの診療、さらに津山中央病院と臨床試験を行っていく。

 藤木 定期的に健康診断を受けてほしい。がん治療には早期発見が一番大切だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年07月03日 更新)

タグ: 津山中央病院

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