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認知症診断でのPET有効性検証 川崎医科大病院などが臨床試験

認知症診断の臨床試験に使用するPET=川崎医科大病院

 高齢化の進展で認知症患者が増え続ける中、がんの検査に使われる陽電子放射断層撮影(PET)が認知症の早期診断に有効かどうかを調べる臨床試験が川崎医科大病院(倉敷市松島)など全国の9施設で行われている。21日は世界アルツハイマーデー―。

 検査の対象は、最も患者が多いアルツハイマー病と若年でも発症する前頭側頭葉変性症が疑われる人。この二つの病気は、有害なタンパク質が脳内にたまり神経細胞の働きが阻害されることが原因で発症する。

 検査では、特殊な薬剤を注射して脳内での広がり具合を撮影し、神経細胞の機能が低下していないかどうかを調べる。同病院のほか、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)、広島西医療センター(大竹市)などが共同で検査を実施している。岡山旭東病院(岡山市中区倉田)と名古屋大病院も参加を予定しており全11施設となる。

 今年2月スタートし、来年3月までに全国で計190人に検査をする計画だ。検査後、経過を1年間観察し、検査の有効性を検証する。順調なら2019年ごろの保険適用を目指している。

 認知症の診断は、コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)、脳の血流をみる単一光子放射断層撮影(SPECT)などを行うのが一般的だが、PETはこれらよりも精細な画像を得ることが期待できるという。米国では既に保険適用されている。

 国の推計では認知症の高齢者は全国で約460万人。団塊の世代が75歳以上となる25年度には65歳以上の5人に1人に当たる700万人に増えるとされる。有害なタンパク質は15~20年をかけて脳内に蓄積されて発症に至るため、いかに早く脳内の異変を発見するかが課題となっている。

 川崎医科大の臨床試験責任者の砂田芳秀副学長(神経内科学)は「PETで早期診断が可能になれば、重症になる人を減らすことができ、高齢化社会に与える影響は非常に大きい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年09月19日 更新)

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