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(4)非薬物療法 倉敷成人病センター産婦人科部長 西内敏文

西内敏文産婦人科部長

 今回は「非薬物療法」についてお話します。最初に「カウンセリング」についてです。

 医療機関における更年期女性へのカウンセリングもまず何より患者さんの話す内容に耳を傾けることから始まると思います。言うは易し行うは難しで、医療側が努力を重ねる必要があります。帰り際に患者さんが「話を聞いてもらって楽になりました」と言ってくださるのは本当にうれしい瞬間です。

 次に「運動療法」です。メリットは薬物療法と比べて効果は小さいかもしれませんが、費用も少なく手軽にできます。継続することによって日常の悪い習慣(喫煙、過度の飲酒、過食など)を修正でき、生活習慣病の一次予防への効果が期待できる―などが挙げられます。具体的にはジョギングなどの有酸素運動を週3~4回、30~60分程度行うのが効果的です。運動時に増加する血中カテコラミン、セロトニン、β―エンドルフィンなどの関与のほか、運動が有する心理的効果や運動に参加するなどの環境要因の変化が、症状の緩和に一役買っているのではないかと言われています。

 その他として「サプリメント」も以前から複数あります。今回は名称の紹介にとどめます。大豆イソフラボン、大豆イソフラボン代謝産物エクオール、レッドクローバー、ブラックコホシュ、ザクロ、ローヤルゼリーなどです。

 更年期障害について説明してきましたが、更年期以降のライフステージでぜひ知っておいていただきたい疾患に骨粗しょう症があります。詳しくは整形外科の先生方にお譲りしますが、婦人科の立場から簡単に説明します。ありがたいことにエストロゲンは骨を強く保つ(骨密度を低下させない、増やす)作用があります。そのエストロゲンが低下するのが更年期ですから、更年期を境に骨密度は低下し続け、骨粗しょう症やそれに近い状態になり、将来骨折する方が増えます。女性に生まれたこと自体が骨粗しょう症のリスクになります。またやせ形の方、過剰なダイエットを経験した方、そして、母親が腰が曲がっている方などが要注意です。更年期の時期の方は整形外科か婦人科で、それ以降の方は整形外科でご相談ください。

 明確な診断基準のない更年期障害は「かなりあいまいな領域」です。臨床の現場では「かもしれない」「可能性がある」「ないとはいえない」…などなど、担当医も時に迷います。そして、はっきりした診断を求める患者さんには、あきれられたりお叱りを受けることもあります。が、そんな領域だとご理解いただけると幸いです。

 個人的には更年期障害の治療の目標は生活に支障がない程度に症状を緩和させることと考えています。たとえ診断がはっきりしなくてもです。更年期症状が多様であるように治療方法も当然違っていいわけです。お困りの際には一度かかりつけ医にご相談ください。

 最後になりますが、更年期はよくトンネルにたとえられます。

 「長いトンネルもあれば短いトンネルもあり、狭い広いもある、明るい暗いもあります。いずれにしてもやがてトンネルは抜けます。抜けると明るい日差しが迎えてくれます」

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 倉敷成人病センター(086―422―2111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年09月19日 更新)

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