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(5)直腸脱ってなんだろう? チクバ外科・胃腸科・肛門科病院理事長 竹馬彰

竹馬彰チクバ外科・胃腸科・肛門科病院理事長

 今回は直腸脱のお話をします。

 直腸脱も高齢女性に多く見られる疾患です。もちろん若い人や男性にも直腸脱の方はおられますが頻度としては圧倒的に高齢の女性に多いのです。

 骨盤を支える筋肉が弱くなると同時に肛門括約筋の緊張が弱くなり直腸が肛門から引っ繰り返るように脱出するようになっているものを言います。

 原因は出産によって骨盤底筋が進展されることや便秘による長時間のいきみなどが考えられていますが子宮脱を合併することもありいくつかの原因が重なってなるようです。

 発症時は多くの患者さんが「どうも最近排便時に粘液がよく出ると思っていたら何か排便後に軟らかいものが出てくるようになりだんだんひどくなって排便するたびに肛門から出て来るのが大きくなった。いつもベチャベチャするし時には出血もする。押し込んだらもとに戻るがまた出てくる。オシメをしとかないといけなくなった」というような症状で病院へ来られます。

 診断は直腸が脱出した状態が確認できればすぐに付きます。

 治療は手術になります。手術の方法には大きく分けて二通りあり、腰椎麻酔という下半身だけの麻酔をかけて肛門の方から直腸が脱出しないようにする方法と、全身麻酔をかけてお腹(なか)を開けて直腸を引っ張り上げて固定する方法があります。

 その方の全身の状態を見て手術方法を決めますが多くの場合は肛門から手術を行います。

 脱出する直腸を縫い縮め(Gant―三輪法)、緩んだ肛門のまわりに人工物を埋め込み肛門を少し狭くする(Thiersh法)ことが手技も簡便で入院期間も短いことからよく行われていますが再発することもあります。

 全身麻酔をかけることが問題なければ直腸の固定をします。この方がはるかに再発率は低くなっています。特に最近は腹腔(ふくくう)鏡を使った方法で行うことも多く傷も小さくできるようになりました。

 手術をして症状が改善すれば随分と不快な思いをしなくてもすみ、楽になります。何か普通の痔(じ)とは違うぞと思われたら専門医にご相談ください。

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 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院(086―485―1755)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年10月03日 更新)

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