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乳がん検診 川崎医科大病院長 園尾博司

 ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝性乳がんで予防的な乳房切除を行い、話題となった。また、日本でも昨年、今年と相次いで女性タレントらが乳がんにかかり、しかもかなり進行していたとの報道があり、乳がんへの関心が高まっている。

 がん検診を受けるのは結構なことであるが、「知人が乳がんにかかったから自分も心配」と受診する人は多いが、異常がなければいつの間にか忘れ去ってしまう人が多い。

 乳がんの診療に携わって40年以上になる。「あの時、検診を受けていれば」と悔やむ女性をたくさん見てきた。それでも皆、前向きに闘っている。女性は強いと心底思ったことは幾度となくある。それは家族や子供のために絶対に生きなくてはいけないと思っているからであろう。再発しても抗がん剤の副作用に耐えている姿をみると精いっぱい支えたいと思う。

 全国の市町村が行う乳がん検診受診率は3割程度と高くない。岡山県内の受診率もほぼ同率である。自分で人間ドックや検診センターを受診する人を加えても5割弱である。本年度から国の検診方針は「40歳以上にマンモグラフィー単独で行う」となったが、岡山県では従来通り「40歳以上にマンモグラフィーと視触診の併用検診」を実施する。マンモグラフィーの方が視触診より早期がん発見率が高いので、マンモグラフィーは必須である。ただ万能ではないので、視触診を加えるのである。

 最後になるが、江戸時代の狂歌の大家、大田南畝(おおたなんぼ)の辞世の歌「今までは人のことだと思ふたに、俺が死ぬとはこいつはたまらん」を教訓に、ひとごとと思わず多くの人に検診を受けてもらい、家族のためにも助かってほしいと願っている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年11月18日 更新)

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