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超高齢社会の医療 川崎医科大病院長 園尾博司

 「ひとつ得ればひとつ失う」という言葉がある。国の政策もそうであるが、現在は経済優先の世の中である。確かに人々の暮らしは昔に比べて便利になり、効率もよくなった。一方で、余裕がなくなり、人に対する思いやりや目に見えない大切なものを失ってきている。

 医療の世界も経済や効率を意識せざるを得ない状況にある。以前のように大きな病院で十分な治療を受け、長い間入院することができなくなっている。国が、急性期を過ぎた患者は転院・退院となる流れを推し進めているためだ。

 日本は今、超高齢社会に突入している。今後さらに高齢者が増えるため医療費が高騰し、病床が不足するといわれている。

 このため、手厚い医療を行う急性期病院は急性期を過ぎた患者をできるだけ早く回復期・慢性期の病院に移して急性期病院の病床を減らし、回復期・慢性期病院の病床を増やすと同時に、在宅医療の機能強化を図ることで病床を確保し、医療費を削減しようというシステムが構築されようとしている。地域の医療機関はそれをどのように円滑に受け入れていくかについて、県と相談しながら実行に移しつつある。

 これからの厳しい時代を切り抜け、患者さんが満足できる医療を提供するためのキーワードは「良い医療連携」である。高度急性期病院である当院は今年、特に交流の深い40病院と連携協定を結んだ。これを機に職員同士が顔を会わす機会を増やし、より良い医療連携を図り、患者さんに安心してもらえる医療を展開することを目指している。

 今こそ、当院開設以来の理念である「医療は患者のためにある」を職員皆で大切にしていきたい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年11月24日 更新)

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