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(2)臨床心理士 川崎医療福祉大学医療福祉学部教授(心理・教育相談室長) 進藤貴子

2014年3月に川崎医療福祉大学修士課程を修了した小林菜緒子さん。臨床心理士として、日々、さまざまな悩みを抱えた人の声に耳を傾ける=林精神医学研究所岡山EAPカウンセリングルーム(岡山市中区浜)

進藤貴子医療福祉学部教授(心理・教育相談室長)

切実な悩み、思いに対応

 人生の中で出会う問題に、私たちは周囲の人々と支え合い、時にはぶつかり合いながら、果敢に取り組んでいます。身近な人に相談し、時には愚痴をこぼしあいながら、理解者・支援者を得られている方も多いでしょう。一方、このことは誰にも深く話せないという問題を、人知れず抱え続ける場合もあります。

 しかし、誰にも迷惑がかからない場所で、抱えてきた悩みをじっくり語り尽くせたとき、変化の第一歩を踏み出せることも少なくないように思います。私情を交えず正確に理解しようとする相手がいて、しかも、外には秘密が漏れないところだからこそ語ることができるのだと思います。これがカウンセリングルーム(心理相談室)の機能です。

 本学には心理・教育相談室があり、地域の方が家庭や学校、職場での悩みを抱えた時、電話予約して有料で利用していただけます。

 幼児の子育ての悩み、小学生の学習や行動上の問題、思春期の不登校問題などには必要に応じて心理テストを用い、発達特性、親子関係、対人関係などの見立てをしながら、悩み多い成長過程に伴走しています。

 大人の方は、さまざまな背景から長年の葛藤が極まり、迷いつつ、あるいは切実な思いで、カウンセリングの扉をたたかれています。

 これまで4歳から70代まで、さまざまな年代、立場の方が、利用してくださいました。これらの相談には臨床心理士である教職員と、臨床心理士を目指して学んでいる大学院の実習生が協働して対応しています。

 臨床心理士は1988年に発足した民間資格で、全国では3万人超(2016年度現在)が公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定を受けています。

 心理専門職には、精神疾患を抱える方の治療と生活に寄り添ってきた長い歴史があります。加えて今日では、身体疾患のチーム医療にも携わっています。川崎医科大学付属病院(倉敷市松島)では、心療科、神経内科、リハビリテーション科、小児科、新生児科、血液内科、緩和ケアセンターなどにおいても臨床心理センターのスタッフが心と身体、患者さまと医療者の架け橋となっています。

 川崎医科大学総合医療センター(岡山市北区中山下)では、患者診療支援センターに臨床心理士が常駐し、がん治療をはじめ、療養生活を心の面からお支えしています。

 こうした医療現場のほかにも臨床心理士は多くの領域で働いています。約470人が所属している岡山県臨床心理士会では、学校臨床心理士、医療保健、高齢者支援、エイズカウンセリング、被害者支援、子育て支援、発達障害支援、産業領域、児童福祉と、九つの職域に対応する部会が設けられています。

 本学では1996年の修士課程設置から、約180人の大学院(修士課程)修了生を輩出してきました。上記の各部会などで研鑽(けんさん)を積みながら、現場の実務に携わっています。

 2015年、待たれていた国家資格・公認心理師を認定する法律が成立しました。大学と大学院で心理学の幅広い知識と臨床技能を身につける、最低6年間の学修が必要とされます。国家資格をもった公認心理師第1号は、早ければ1年後にも誕生します。

 本学でも臨床心理士とあわせて公認心理師資格を取得できるようカリキュラムを整備中です。悩んだ時に気軽に会いに来ていただける存在となれるよう尽力したいと思います。

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 川崎医療福祉大学(086―462―1111)

 しんどう・たかこ 京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位認定満期退学。1997年、川崎医療福祉大学講師、2010年より現職。大学院臨床心理学専攻副主任、付属心理・教育相談室長。地域では、倉敷市男女共同参画推進センターおよび倉敷市不登校支援研修会でスーパーバイザー、岡山県警察犯罪被害者カウンセリングアドバイザーなどの活動をおこなっている。呉市出身。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年02月06日 更新)

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