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(4)医療に強い介護福祉士 川崎医療短期大学医療介護福祉科副主任・教授 山田順子

川崎医療短期大学医療介護福祉科を卒業し、2015年4月から川崎医科大学総合医療センター回復期リハビリ病棟に勤務する牧本まどかさん。大学で身につけた医療の知識を生かし、患者の在宅復帰を支援している

山田順子副主任・教授

「施設から在宅」橋渡し期待

 川崎医療短期大学は2012年、それまでの「介護福祉科」を名称変更し、全国初の「医療介護福祉科」を設けました。たんの吸引などの医療行為を介護職員にも認める介護保険法改正(11年)を受け、高度な専門性を持った人材を育成して地域社会のニーズに応えるためです。その名の示す通り、「医療と介護の連携」「医療に強い介護福祉士の養成」を目標に掲げています。

 現在、わが国は諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しており、今後も75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されています。団塊の世代(約800万人)が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」を控え、今後国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれます。医療に強い介護福祉士の育成は時代の要請とも言えます。

 その目的に沿った教育を行うため、医療介護福祉科では、通常の介護福祉士養成のカリキュラムに「老年医学」「公衆衛生学」「人体の構造と機能」などを独自に加えて医療系科目を充実させています。授業は川崎医科大学付属病院内の教育施設を最大限に活用して、医療専門職が指導します。これまでに約700人が巣立ち、介護老人福祉施設や介護老人保健施設を中心に活躍しています。2年次の夏休みに川崎医科大学総合医療センターで体験するインターンシップの経験を生かして、近年は病院で働く卒業生も増えています。

 インターンシップで学生たちは、病院で働く介護福祉士の仕事の理解を深めます。看護師と介護福祉士が情報を共有しながら一緒に患者さんに関わっていることや、チームワークを大切に連携していることを身近で学びます。カンファレンスにも参加させてもらい、看護師と意見交換する様子を見ることができ、進路を考える上で大変役立っています。

 川崎医科大学総合医療センターでは「医療介護福祉士」という職種として勤務しています。回復期リハビリテーション病棟では脳卒中、脊椎損傷、骨折などの急性期治療後に全身状態が安定し、集中的なリハビリテーションが必要な方に対して、介護のプロとしての支援をしています。

 さらに、退院に向けての不安や患者さん自身が願う未来像などの思いをくみ取り、このことを他職種に伝える橋渡しも大切な役割です。医師・看護師・リハビリ専門職・医療ソーシャルワーカーとの情報共有を深め、チームの一員として患者さんの思い描く生活に少しでも近づけるよう支援しています。

 厚生労働省は25年をめどに、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう「地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。「住まい」「医療」「介護」「生活支援・介護予防」の各サービスを一体的に提供するため地域社会の体制整備を進め、「施設から在宅」へとケアの場を移していこうという取り組みです。

 しかし、とはいえ多くの高齢者は何らかの疾患を抱えています。認知症の方も増えていきます。地域包括ケアシステム構築の流れの中で、医療に強い介護福祉士の存在感はこれまで以上に増していくことでしょう。病院、施設から住み慣れた地域生活への橋渡しの役割が期待されています。

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 川崎医療短期大学(086―464―1032)

 やまだ・じゅんこ 川崎医療福祉大学大学院医療福祉学研究科博士課程医療福祉学専攻修了。博士(医療福祉学)。川崎医療短期大学医療介護福祉科准教授を経て2015年から同短期大学医療介護福祉科副主任、16年から医療介護福祉科教授。岡山市出身。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年03月06日 更新)

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