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倉敷平成病院がニューロモデュレーションセンター開設 上利崇センター長に聞く

倉敷ニューロモデュレーションセンターの特色について語る上利崇センター長

電気刺激で震え、痛み緩和

 倉敷平成病院(倉敷市老松町)は1日、パーキンソン病などの脳疾患や、慢性の痛み治療を目的とした「倉敷ニューロモデュレーションセンター」を院内に開設した。脳深部や脊髄に電気刺激を送って症状を改善させる「神経調節療法」と呼ばれる治療に約20年取り組んでいる上利崇センター長に、治療の仕組みやセンターの特色について聞いた。

 ―センターを開設する意図を教えてください。

 神経調節療法は、脳神経外科、神経内科、リハビリ科、放射線科などの専門領域がチームを組んで治療に正確な診断を行うことで、より有効性を発揮します。センター開設によって、最適な治療体制をとることができます。岡山県内でこの療法を導入している施設はまだ少なく、脳深部と脊髄への療法がどちらも行える施設は、岡山大病院(岡山市)と当院だけです。センター開設を機にこの治療を広く知ってもらい、倉敷以西を中心に、岡山県内外の患者に手厚い医療を提供したいと思っています。

 ―そもそも、神経調節療法とはどのような治療法ですか。

 脳や脊髄の神経に微弱な電気刺激を持続的に送ることで、震えや慢性痛を起こしている神経の異常活動を抑制したり、正常化したりすることができます。脳内や脊髄を包む硬膜の上に電極を挿入し、胸や腹部に埋め込んだ4~5センチ大の装置から刺激を送ります。刺激の位置や強さを自由に変更でき、症状の変化に合わせた治療を行えるのが利点です。

 ―どのような疾患に対応するのですか。

 脳深部刺激は、パーキンソン病や、体に震えの症状が出る本態性振戦(しんせん)、自らの意思とは関係なく筋肉の異常緊張が起こるジストニアなどに効果があります。いずれも薬物療法ではコントロールが難しく、他の治療方法が困難な場合に適応となります。

 脊髄刺激は、脊椎・脊髄疾患や帯状疱疹(ほうしん)後、開胸手術後、脳卒中後疼痛(とうつう)など、神経が傷を負ったことによる痛みに有効です。

 ―治療の手順は。

 まず外科手術で電極や刺激装置を埋め込みます。特に脳の電極位置は、少しの誤差も許されません。術中に神経活動を計測したり、患者の反応を見たりしながら、確実に症状が改善し副作用が出ない場所に留置します。

 手術をすれば治療終了ではなく、ここからが始まりです。術後数カ月は、頻繁に外来に通院して刺激の強さを調整する必要があります。その後は症状をみながら、定期的に刺激調整を行います。脊髄刺激の場合、痛みが出た時点で、患者本人が体内装置をリモコンで操作して刺激を送り、痛みを和らげます。

 ―体内に機器を埋めるのは、患者にとって不安があるのでは。

 抵抗がある人は多いと思いますが、機器の性能は年々向上しており、不便さも少なくなっています。現在の刺激装置は電池式と充電式があります。電池式は4~5年に1回の交換が必要ですが、局所麻酔で20~30分程度で済みます。充電式は10~20年使用でき、患者本人が簡単に充電できる機種が増えています。体内に治療機器があるとMRI検査が受けられないケースがありますが、対応型への改良が進んでいます。

 ―センターの特色と今後の目標を教えてほしい。

 関係する診療科の医師をはじめ、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、臨床工学技士、ケアマネジャーなど多職種がチームを組み、治療に当たります。地域に密着した中規模病院の良さを生かし、患者の生活を支えるトータルケアを行うことができるのも強みの一つです。専属コーディネーターの看護師を置いて、長期間の治療スケジュールをサポートし、患者の不安にも寄り添っていきます。患者の生活の質にも目を向け、将来的には栄養や睡眠指導の分野にも力を入れていきたいと考えています。

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 倉敷平成病院(086―427―1111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年04月04日 更新)

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