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(2)フットケア外来 倉敷平成病院形成外科 廣瀬雅史

フットケア外来のスタッフ

胼胝や鶏眼の処置をする看護師

廣瀬雅史氏

 当院では「フットケア外来」という専門外来を開設しています。対象疾患は、外反母趾(ぼし)や巻き爪、胼胝(べんち)=たこ、鶏眼(けいがん)=うおのめ、足の難治性皮膚潰瘍や下肢血流障害など足に関するさまざまなものがありますが、どうしてフットケアが専門外来になっているのでしょうか。

 手は日常生活で目に入ることが多いですが、足は注意を払うことが少なくなりがちです。また、高齢や脳梗塞後で動きが不自由になりケアが十分にできないことがあります。そして、足にたこができている「だけ」、傷ができている「だけ」と軽視されがちなのですが、実は全身に大きな問題が隠れている場合があるのです。特に重篤な問題となるのが、下肢血流障害と糖尿病性下肢障害です。

 下肢血流障害は、動脈硬化等により動脈が狭くもしくは閉塞し、血液が足先にまで流れずいろんな症状が出ることです。高血圧や喫煙、糖尿病、高脂血症などの生活習慣が原因となることが多く、近年増加傾向にあります。充分な血流がないことで、最初は足が冷たいという症状から始まり、足が痛くて歩けない、安静にしていても足が痛い、足に潰瘍ができるといった症状に進行します。足の傷ができやすい、一度できたらなかなか治らないということがあれば血流障害があるかもしれません。

 糖尿病性障害は、糖尿病による神経障害、血流障害、感染症が原因となり、足にさまざまな症状が出ることです。神経障害による感覚の低下や足の変形が原因で胼胝や傷ができやすくなります。また、血流障害や感染症により傷が治らないことや急に悪化することがあります。

 これらは下肢切断の大きな原因となっており、わが国でも増加傾向にあります。大事なのは「予防」ですが、臨床の現場では複数の問題が組み合わさっていることが多く、単一に対応するのではなく、いろんな角度からの治療が必要になります。

 当院でのフットケアは五つの外来で成り立っており、形成外科専門医が行う「フットケア外来」が当院のフットケアの玄関口となっています。「フットケア処置外来」ではフットケアを専門とする6人の看護師(糖尿病認定看護師、糖尿病療養指導士、フットケア指導士)が足の状態をチェックし、日ごろの手入れの指導や胼胝の処置、爪切り等を行っています。

 「履物外来」では義肢装具士(外部委託)が、その人の足の形や症状に合わせて靴やインソールの作製から歩き方の指導まで幅広く対応しています。靴選びは巻き爪や胼胝の改善・予防だけでなく、膝痛や腰痛、外反母趾や転倒の予防にも重要な要素となります。

 「倉敷生活習慣病センター」では糖尿病専門医が糖尿病や高血圧など動脈硬化の原因となる内科疾患の治療に当たります。「血管外来」では血管外科専門医が血流の評価をし、必要な際には他院と連携し血行再建を行っています。他にも、歩行に障害がある場合は理学療法士がリハビリテーションを施し、歩行のサポートをしています。

 年齢を重ねることで膝や足の変形を伴い歩き方が変わる方もいます。自分の足で元気に歩くためにも、日常生活では意識することの少ない足に一度着目してみてはいかがでしょうか。私たちも全力でサポートいたします。

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 倉敷平成病院(086―427―1111)

 ひろせ・まさし 兵庫県・甲陽学院高校、奈良県立医科大学卒。明石市民病院、神戸大学医学部付属病院、神鋼記念病院、兵庫県立淡路医療センター、兵庫県立加古川医療センター、聖隷三方原病院を経て2017年4月より倉敷平成病院に勤務。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年07月03日 更新)

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