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乳幼児の白い下痢続いたら ロタウイルスに注意 脱水症状で重症化も

風邪気味の赤ちゃんを診察する久保主任医長。乳幼児に多いロタウイルス性胃腸炎は、脱水症状に気付かない場合もあるだけに注意が必要だ

 幼い子どもが米のとぎ汁のような白い下痢を何日も続けたら注意してほしい。あまり聞き慣れない病名だが、二―四月に流行する「ロタウイルス性胃腸炎」の可能性があるからだ。乳幼児の場合は、脱水症状に気付かず重症化するケースも。国立病院機構岡山医療センター(岡山市田益)の久保俊英主任小児科医長に、症状を解説してもらい、予防を考えてみる。

 「一日十回以上の下痢が数日前から続いていて、便は白っぽく、酸っぱいにおいがします。風邪でもこじらせたのでしょうか」。二月下旬、生後数カ月の赤ちゃんを連れた母親が、岡山医療センターの小児科を訪れた。

 久保主任医長は、赤ちゃんのぐったりした様子から風邪ではなく、ロタウイルスによる胃腸炎と診断。赤ちゃんは頻繁な下痢で体内の水分を失い、脱水症を起こしていた。すぐ入院させ整腸剤や点滴で水分、塩分などを投与。数日後に無事、退院した。

 ロタウイルス性胃腸炎は、例年二月から四月にかけ流行。小児における急性下痢症の原因第一位で、五歳までにほとんどの子が一度は感染する。二―四日の潜伏期間を経て発症。嘔吐(おうと)と下痢が主な症状だが、下痢は平均四、五日、長いと一週間以上続く。中には発熱を伴ったり、けいれんを起こすこともある。

 同センターだけでも脱水症状などで毎年八十人前後が入院。外来ではその倍以上の患者が治療を受けているという。

 「特に、生後六カ月から二歳までの乳幼児がかかると下痢が激しく脱水症になりやすい」と久保主任医長。下痢だけだと慌てる必要はないが、おしっこの回数が減る▽量が少ない▽色が濃い▽泣いても涙が出ない―などは体内の水分が不足しているサインなので、早めにかかりつけ医に診察してもらおう。

 家庭でできる対策としては「市販のイオン飲料などで水分を補給するのが効果的。一度ではなく、少しずつ数回に分けて飲ませるのがポイント」とアドバイスする。

 ウイルス性胃腸炎はほかにも「ノロウイルス」が知られている。こちらは秋から年末にかけ流行するが、久保主任医長は「小児ではロタウイルスの方が感染力が強く厄介」と注意を促す。

 感染源として最も指摘されているのが、患者の便。便から放出された無数のウイルスが、何らかの形で人の口に入って感染する。

 一方、病院での治療は、点滴など対症療法が中心。抗ウイルス剤などの決定的な治療法がないだけに、いかに予防するかが大切になる。

 久保主任医長は「汚染されたドアノブや手すりを触ると感染が広がる。子どもだけでなく家族全員が帰宅時や食事前に手を洗うよう心掛けてほしい」と強調する。

 家族に感染者がいたら食器や調理器具、おもちゃ、衣類、タオルなどは八五度以上の熱湯で一分以上加熱することで、殺菌効果があるという。

 現在、日本では岡山医療センターなど全国の医療機関が参加し、生後一カ月の乳児に飲ませるロタウイルス・ワクチンの臨床治験を行っている。すでにアメリカなど約百カ国以上で使用されているが、日本では承認されるとしても数年先になる見込みだ。

 久保主任医長は「当面は家庭での予防が第一となる。ロタウイルスは、ノロウイルスに比べ一般にはあまり知られていない。それだけに、おかしいと思えば早めに小児科を受診してほしい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年03月01日 更新)

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