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岡山の専門医団体連携、支援ネット10周年 岡山大学大学院教授 岩月啓氏理事長に聞く

皮膚病診療支援ネット岡山を通じ、正しい医療情報の発信に努めてきた岩月啓氏岡山大学大学院教授

正しい皮膚病情報を

 インターネット上にはさまざまな病気の治療法や健康についての情報があふれている。アトピー性皮膚炎などを扱う皮膚科領域でも、どの情報を信じればよいのか迷い、結果的に不適切な治療を受けて後悔する患者が少なくない。そのような状況を憂う岡山の皮膚科医たちは2007年、NPO法人「専門医による皮膚病診療支援ネットワーク岡山」を立ち上げ、正しい医療情報の提供や市民公開講座の開催などに取り組んできた。理事長を務める岩月啓氏岡山大学大学院教授・同大学病院皮膚科科長(64)に、活動の目的や10年間の成果を尋ねた。

 ―なぜ専門医のネットワークが必要だったのか。

 岡山県内の皮膚科領域の団体として、日本臨床皮膚科医会県支部、日本皮膚科学会岡山地方会などがある。さらに私は厚労省の希少難治性皮膚疾患の調査研究班に加わっており、「岡山皮膚難病支援ネットワーク」も設立した。各団体のメンバーは互いに重なり合い、名簿管理や情報伝達の事務がとても煩雑になり、ハブ(車輪の中心)の機能を担う組織が必要だと思っていた。

 市民に正しい医療情報を発信するのも、とても大切な役割だ。かつて根拠のないステロイド不信がはびこったように、何が正しい情報なのか、一般の方が判断するのは難しい。専門医の目でフィルターにかけ、医学的、科学的に認められた情報を発信すべきだが、適切な窓口がなかった。私たちはNPO設立後すぐにホームページを公開し、情報発信に努めてきた。

 ―市民に直接呼び掛ける機会もあるのか。

 各団体が講演会や市民公開講座などを開く時にNPOが手助けしている。個別に同じようなテーマや講師でイベントをやっても効果が薄いので、いつどこで開催すれば内容が重複しないか、連絡協議会で調整するようにしている。毎年、「皮膚の日」(11月12日)の前後に開いているイベントの支援もやりがいのある仕事。専門医の講演と併せて、皮膚難病の方たちの会を開いている。

 NPOとしては、診療上の問い合わせに答えたり、特定の医療機関を紹介することはできない。診療に必要な機器の保有状況を医療者間で情報共有するとともに、研究の新知見や診療ガイドラインなどはなるべくホームページで公開するようにしている。

 ―今後、NPOをどう運営していくのか。

 これまで医師に課せられてきた事務作業をできるだけNPOで代行し、臨床医の本務である診療を充実させたい。今年5月、新たに県皮膚科医会が発足したので、連絡協議会を開いて年間のイベントを調整する役割はそちらで担うことになった。大事なのは情報発信。薬の副作用や感染症などの情報は、メンバーの各団体や専門医に一斉にメール配信できるよう、態勢を維持していく。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年11月20日 更新)

タグ: 皮膚岡山大学病院

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