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今年も、そして今年こそマンモグラフィー検診を おおもと病院副院長 村上茂樹

年齢階級別乳がん罹患数の推移

年代別マンモグラフィー乳腺濃度

村上茂樹副院長

 若き芸能人の方々が乳がんの診断、治療を受けているという報道が流れると、毎日のようにインターネット、テレビ、活字媒体でその方の回復・治癒を祈る言葉とともに、偉い専門家の先生方が不安をあおるようなコメントをされるのが目に留まります。

 女性の平均寿命が87歳まで伸びた一方、46%の女性が生涯でがんと診断され、11人に1人が乳がんと診断される時代です。乳がん増加の要因として、食生活の欧米化による高タンパク・高脂質の食事▽体格がよくなったための初潮の早期化・閉経の晩期化▽妊娠・出産の経験数が少なくなった分だけ月経回数が増加―などが挙げられ、女性ホルモン(エストロゲン)の感受性のある乳がんが増加したともいわれています。

 若い女性に乳がんが増えているのかというと、そうでもありません(罹患(りかん)数グラフ参照)。むしろ60歳以上の方の増加傾向が強く、何歳になっても、乳管(おっぱいが通る管)がある以上、乳がんは発生します。

 乳がんのタイプは人により千差万別ですが、今はいろいろな“腫瘍の性格”を検査することで、治療方針を決めたり、いまだ完全ではありませんが、再発のリスクや予後まで予測したりできるようになりました。

 がんが小さいうちに見つければ、乳房を残す温存手術も可能です。私が研修医だった頃のように、筋肉まで切除したために術後、手術した乳房側の手がむくんだり、運動が制限されたりすることは極端に少なくなりました。

 マンモグラフィー(MMG)検診は、自分で見つけられない小さな乳がんを客観的に発見できる方法の一つです。40歳以上の方のMMG検診を行えば、乳がん死亡率を少なくとも20%減らすことができると推定されています。約7万人の40歳代の日本人女性の参加を募った試験では、MMGに乳房超音波検査(エコー)を併用すると、より発見率が増えたと報告されています。

 MMGで測定した乳腺濃度は人によって違いますし、年齢によって変化してきます(乳腺濃度グラフ参照)。50歳代以上でも、高濃度乳房の方は一度はエコー検査を受けるようお勧めしています。

 前年のMMGと比較することも重要です。当院では2010年にデジタルMMGを導入し、微細な変化まで観察できるようになりました。

 芸能人の方の遺伝性乳がんの話題が一時、世間を騒がせましたが、日本人の遺伝性乳がんは7~10%といわれています。全乳がんのうち、がん抑制遺伝子が関与するのは3~5%と報告されています。ご家族に乳がんの病歴があっても過度に心配することはありませんが、年1回の検診受診はお勧めします。

 当院はベテラン看護師の多い外科専科の病院です。乳がん治療には、放射線科、形成外科、腫瘍内科、歯科など多くの診療科が関わるようになってきており、当院も連携病院の先生方と密な連絡を取らせていただき、検診、発見、診断、治療、術後の経過観察、そして再発後の治療まで、トータルにサポートします。小回りの利く専門病院として、スピーディーかつ安心していただける治療を目指しています。

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 おおもと病院(086―241―6888)

 むらかみ・しげき 岡山操山高校、鳥取大学医学部卒。大阪医科大学一般・消化器外科での研修医、専攻医を経ておおもと病院勤務。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本乳癌学会専門医・指導医。医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年03月19日 更新)

タグ: がん女性おおもと病院

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