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(1)泌尿器科がん 倉敷成人病センター泌尿器科部長 山本康雄

倉敷成人病センターでも腎がんや前立腺がんでロボット支援手術が導入され、小さい傷で患者の身体的負担の軽い治療が行われている

山本康雄泌尿器科部長

 今回は泌尿器科がんの最新治療についてお話しします。

 主な泌尿器科のがんは、「腎がん」「膀胱(ぼうこう)がん」「前立腺がん」―の三つです。いずれも早期のがんでは手術が基本になり、その場合は患者さんの体の負担をなるべく軽くすることを念頭に置いています。進行や転移がある場合は薬物治療が主体になります。

 ■腎がん

 腎がんの治療(表1参照)では、転移がない場合は手術が基本です。腫瘍が大きい場合は腫瘍のある方の腎臓を摘出します。なるべく小さい傷で手術した方が術後の痛みが少なく、傷も目立たず、短期間の入院で済むため、腹腔鏡(ふくくうきょう)手術が広く行われています。

 腫瘍が小さい場合は腫瘍部だけを部分的に摘出します。腫瘍を取り除いた跡を止血しながら修復する必要があり、この操作に優れた機能を持つ腹腔鏡手術用ロボットを使用する施設が増えています。

 転移がある場合は薬物療法を行います。通常の抗がん剤は有効ではなく、分子標的薬という新薬が最も有効で、治療成績も向上しています。

 ■膀胱がん

 続いて膀胱がんの治療(表2参照)です。根の浅い膀胱がんは、尿道から内視鏡を使って腫瘍を切除する経尿道的手術を行います。患者さんの身体的負担の少ない手術です。

 膀胱の壁まで浸潤した根の深いがんでは、膀胱を全部摘出する手術を行います。尿をためるところがなくなるので、新たに尿をためるところ、または流すところを造設する必要があります。腸を使った人工膀胱を造る手術を行えば、術後も自分で排尿できます。

 転移のある場合はやはり薬物治療が基本になります。膀胱がんは抗がん剤が比較的よく効きます。抗がん剤治療は、疲労感や食欲低下などの副作用が問題になりますが、最近は副作用を緩和する薬剤も増え、患者さんの身体的苦痛は軽減しています。

 ■前立腺がん

 最後に前立腺がん(表3参照)です。早期がんには手術か放射線治療を行います。手術では前立腺をすべて摘出します。膀胱と尿道の間にある前立腺を摘出し、膀胱と尿道を縫い合わせます。腎がんと同様、なるべく小さい傷で行う目的で腹腔鏡手術を行う施設が増えています。さらに、より短時間で確実に行うためにロボットを使った腹腔鏡手術が普及してきました。

 放射線治療は前立腺部に放射線を集中的に当てる治療です。手術と放射線治療を比べると、治療成績はほぼ同等ですが、それぞれに特有のデメリットがあり、これがどちらを選ぶかの決め手になります。

 がんが周りに広がっていたり、転移があったりする進行前立腺がんに対しては、薬剤によるホルモン療法が中心になります。ほとんどの進行前立腺がんはホルモン療法が有効で、他の進行がんに比べてよい成績を収めています。

 腎がん、膀胱がん、前立腺がんのいずれも、早期に発見し、適切な治療を施せば、ほとんどの場合完治します。定期健診を受けること、小さな症状でも早めに医療機関を受診することなど、がんの早期発見に努めることが最も大切であることを強調したいと思います。

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 倉敷成人病センター(086―422―2111)

 やまもと・やすお 岡山朝日高校、愛媛大学医学部卒。香川県立中央病院、岡山大学医学部付属病院、岡山協立病院、岡山赤十字病院などを経て、2007年より倉敷成人病センター勤務。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会の泌尿器腹腔鏡技術認定医など。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年04月03日 更新)

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